第四十四章 ページ44
夏が近づいてきたある日。
お昼頃に仕事を終えた私は、自室にこもっていた。
トントンも仕事がようやく一段落して寝ているし、特にこれと言ってすることもないのだが……私はそんな時間を待ち望んでいた。
部屋の隅に置かれていたそれを手に取り、微笑む。
それは、ハープ。
大きさはそこまでじゃない、結構手軽なもの。
実はこの前、パーティーに無理矢理参加させたことのお詫びとしてグルッペンからもらったのだ。
グルッペンの話によれば、とある音楽国から取り寄せたものらしい。
どうしてハープなのかを聞いたところ、ゾムから聞いたと言っていた。
確かに、城下町に行ったときに言ったかも。
私は人に自慢できる程上手なわけではない。
ただ、他の楽器よりも弾ける、というだけ。
でも、私はハープが好きだった。昔、少しだけ弾いていたから。
譜面はない。でもあの時弾いていた曲は感覚で覚えている。
椅子に座り、そっと弦に指を置く。
弾(はじ)いてみると、弦楽器独特の音の振動。
懐かしさに思いをはせながら、私はたどたどしくその曲を奏で始めた。
・
「綺麗な音やなぁ」
『うわぁああ!?』
「うおっ、なんやねん」
『こ、こっちの台詞!なんで窓から入ってくるの』
どっからでもええやろ、と何の答えにもなってない事を言いながらゾムは笑う。
もっと普通に登場できないのか。
「ホントに弾けたんやな。グルッペンに言って正解やったわ」
『なんで？』
「だって、Aの演奏聴いてみたかったんやもん」
そう言うと、私の隣、床に腰を下ろした。
その行動に首をかしげるとゾムは二ッとはにかむ。
「特等席や」
どうやらここに居座るらしい。
じっとすることが好きじゃないはずなのに。
ゾムはすでにフードをとって耳をこちらに傾けている。
断る気はなかったけど、ここまできたら弾くしかない。
本当はもう少し上手になってから聞いてほしかったけどね。
外で小鳥のさえずりが聞こえる。そよ風もカーテンをなびかせて。
なんか雰囲気あるな、なんて思いながら、再び弦の音色を響かせた。
その日の夕方。
ゾムが入ってきた時に窓を開けっぱなしにしていたからみんなにも演奏が届いていたということを聞いた。今度から気を付ける、と返すと全員一致で
「ずっと開けといて」
との意見。
迷惑になっていないのなら私としては何にも問題はないのでそうすることに。
この日以来、時々城にハープの音が響くようになった。
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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます！様！？私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー！！ (2017年9月3日 17時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ！！リノ様の文章力で妄想が止まりませんｗｗ これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(＊ﾟ∀ﾟ)ｂ (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます！嬉しいですー！私自身、最初読み間違えたんですよ（笑）、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます！ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです！ (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年8月21日 13時
