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第四十三章 ページ43

トントンに手を引かれ、総統室を出る。
顔はよく見えないけどまだ怒ってるみたい。
まぁ、ちゃんと仕事してるのにサボってたら怒るよね……。


さっきのは私もサボってたのと同じだし怒られても仕方ない。
チョコ美味しかったな。


「なぁ」

『は、はい!』


早歩きで進んでいたトントンが急に止まり口を開いた。
そしてこちらに振り向く。
その表情は怒っているというよりは不満そうなもの。


「もう少し危機感を持ってもらっていいですかね」

『……き、危機感。といいますと』

「はぁー、だから……」


呆れたように溜息をついたトントンはグイッと私を引き寄せ、顔を近づけた。
さっきのグルッペンよりも近い。
レンズの奥にある赤い瞳が私を見つめる。


「こんな風に顔を近づけられたら、少しは逃げようとしろってこと」

『……!!』

「ほら、逃げない」

『え、っと、でもトントンは大丈夫だよ』


トントンは怒るととっても怖いけど、何より他人を気遣える。
他人の嫌がることは仕事以外は押し付けない。
ここに来てから私はトントンをそういう人だって思ってる。
……え、実は違ったりするの?


トントンは少し目を見開いてそしてまた呆れたように顔を遠ざけた。


「急にどっか行きそうで心配やわ……」

『行かないよ?」

「いや、誰かに連れていかれそうって意味」


いろんな意味でな、とそっぽ向く。
手も離されて、また彼は仕事に戻るんだろうな、と思った。
図々しく、めんどくさいかもしれない。
さらにトントンに負担をかけてしまうかもしれない。
……でも、私は彼の袖を掴んでいた。


『じゃあ、ずっと目を離さないで』


私もみんなと離れたくない。
とは言っても力不足の私じゃ、どうにもならないんだ。
厚かましいけど、見守っていて。
いつか、私がみんなに力を貸せるようになるまで。


「……Aも、目の届かんところに行かんでな」


それはつまり、ずっと傍に居ろという事?
……よかった、やっぱりトントンは優しいな。


『うん……!』


素直に頷くと、やっとトントンの顔に笑顔が戻った。
さて、お仕事の続きだ。

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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時

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