第三十二章 ページ32
開戦当日
いよいよ戦争が始まる。
ロボロの情報では、敵国と我々国の間にある街が敵の前哨基地らしい。
私とシッマはそこに行き、敵の警告ベルを鳴らして混乱させることが目的。
トントンの部屋を出てから少しの仮眠と取って、まだ夜が明けていない時刻に私達は目的地へと向かった。
敵に見つからないように暗いうちに行くのだ。
でも、それは逆もまた然り。細心の注意を払って進んでいく。
日の出の頃には、すぐそこまでたどり着いていた。
・
ところどころの店から音楽が微かに聞こえるだけの街。
敵に聞こえてはいないだろうが、自分たちの足音がやけに大きく感じる。
思っていた以上に人が居ない……というか、未だに見つけられない。
居たらいたで嫌だけど居なさすぎるのも不安になる。
「ゆっくり近づいていくで」
小声のシッマに私も届くギリギリの声で返す。
向かう先は警告ベルの作動システムがある建物。
あれを鳴らせば後ろからの敵襲と思わせ、混乱させられる。
『ねぇ、シッマ……なんかおかしくない?』
歩きながら少し前のシッマに囁く。
……さっきから違和感だらけで、嫌な予感がするのだ。
「何がや?」
『人がいないの。でも……気のせいかもしれないけど……』
視線を感じる。
息をひそめて虎視眈々と私たちを見ているみたいで……。
そう考えただけで悪寒が走る。
速く行ってしまうのがいいだろう。
『シッマ、なるべく早く行こう』
そう言った時だった。
私とシッマ、それぞれの後ろに突然人が現れた。
それが敵で、マズいと思うよりも速く強い力で押され、倒れこんでしまう。
打ち付けた肩が痛んだが体勢を整えなきゃと思っている間に、明かりが消える。
『……!?』
扉の閉まる音と鍵が閉められた音が聞こえた。
閉じ込められた……?
どうして敵は完全に不意を突いたのに私たちを攻撃しなかったの?
捕虜にするとしても気を失わせるのが最善。
……閉じ込めることで得られるメリットは何?
私は驚きながらも敵の思考を読み、その目的を考える。
そのすぐ近くでシッマの声が聞こえた。
「ヤバいで……あと十五分後には合図が来る。それまでにここから出て目的地に着いとかな作戦は失敗してまう!」
靴の音。シッマが立ち上がったんだろう。
あと十五分……それまでの足止め?でも効率悪いし、確実じゃない。
……敵は、私達がここで確実に出られないと思ってる?
『……っ!シッマ!!』
それに気づいた私は咄嗟に叫んだ。
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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時