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第三十章 ページ30

開戦まで残り一日の夜


トントンside


戦争前日の夜は特に忙しい。
終わった後も大変なのだが、始まる前も同じぐらいだ。


大先生やコネシマ達がすでに寝ているであろう時間。
今までならイライラ全開……だが、今日は感じなかった。
理由は単純明快。
Aが隣で一緒に作業しているから。


俺の部屋でAと2人きりとか。
ちょっと俺にはハードル高すぎんよ……。


一枚、また一枚と仕事を終わらせていくAにふと、目をやる。
横から見るとよく分かるのは、やっぱり美形だってこと。
睫毛長げぇ……。
肩ぐらいまで伸ばされた黒髪は一本一本が細くて。
疲れからか、細められた目が色気を漂わせる。


……って、何考えてんねん。


「……」

『……ん、どうかした?』

「え!?な、なんでもないで!」


気付けばAがこっちを見ていた。
二色の色を宿した大きな瞳。
愛らしいこの少女が発したあの殺気。
……何かを隠してる。でも、敵じゃない。そう思いたい。


多分、Aが敵だったとしても俺はAを殺せない。
そうだったとしても、もう遅のだ。彼女を失うのが、怖くて……怖くて。
もし明日の戦争でAが死んでしまったら……?


『トントン、ホントに大丈夫……?顔色悪いよ』

「なぁA」

『うん』

「…………」


俺は言葉に詰まる。
なんて言葉をかけるのがベストなのか、わからない。
死ぬな?無茶するな?……何が正解なんだ。


『……?』


俺を見つめるAの顔を見て、さらにわからなくなる。
伝えたいことはたくさんあるのに、言葉にならない。
……もどかしい。


「A」


もう一度名前を呼び、彼女の言葉を聞くよりも先に抱きしめる。
結果、引き寄せてしまったからAは俺に倒れこむような体勢になり、思っていたよりも心臓に悪くなった。
バクバクの心臓の音が聞こえているんやろうな。


「……明日、絶対帰ってきぃや」


やっと言えた言葉は何とも曖昧。
だけど、今の俺が言える最大の言葉だった。
戦争に行って、一日で帰ってこれる保証はない。
もしかしたら長引くかもしれない。
それでも明日、と言ったのはただの願望だ。


『……うん』


俺の腕の中でAが頷いたのがわかった。
その行動ひとつひとつが可愛くて仕方ない。
……俺の補佐は、こんなにも可愛い。


俺はAの頭を一度撫でてから離す。
さぁ、仕事の続きだ。
もう少し、二人だけの時間を__。

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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時

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