第二十八章 ページ28
開戦まで残り二日の昼
『終わったぁ〜……』
疲労混じりの情けない声を出しながら背中を伸ばす。
今は昼過ぎぐらいだろうか。
途中、オスマンが持ってきてくれたサンドウィッチがお腹のの中で丁度いい感じに無くなっている。
今日の仕事の量はいつもより少なかった。
でも、私はわかっている。これは津波が来る前の海と同じだ。
何が言いたいかというと、仕事が少なくないのは、大量に増える前兆だってこと。
きっと明日はトントンと一緒に徹夜だなぁ。
『……資料届けに行こう』
・
届け終わり、暇になった私は鍛錬上に向かう。
気休めでしかないけど、そういうのを見ておきたいのだ。
鍛錬場にはシッマとシャオロンがいた。
私が来たことにすぐ気付き、驚いたように駆け寄ってくる。
……ワンコみたい。
「Aどうしたん?」
『いや、ちょっと戦闘を見てみたくて……』
二人は多分私の不安を感じ取ってくれたらしく、ええで!と笑った。
少し離れた所に移動して、そこから二人の姿を見守る。
シッマは木刀、シャオロンはシャベル。
……どうしてシャベルなのかわからないけど、シャオロンは自在に操ってる。
あれがシャオロンに一番合う武器なんだろうな。
派手な音を響かせながらお互いの攻撃を受け流していく二人。
戦う姿を見ると改めて私は軍にいるんだって思う。
書類仕事ばっかりだった私が戦場に行く、ってことも……。
《Aちゃんの瞳って変わった色しとるね》
『…………』
「……っ!!危ない!!」
シャオロンの叫び声。
視線を前に向ければこちらに飛んでくる木刀が見える。
……これは避けられないな。
だから。
「「……!!」」
くるくると回る木刀を片手で掴む。
先端が私の方を向いていて結構危ない。
よく見ると止まった木刀は私ともう一人の手が掴んでいた。
指が出た手袋をつけた手。
『ありがとう、ゾム』
「……いや、俺が止めんでも良かったな」
「大丈夫か、A!!」
『うん、シャオロンのお陰で。ありがとう』
「おう、そうか……ったくコネシマ気を付けろよな!!」
「ホントすまん……!!」
『怪我してないから、気にしないで!』
受け止めた木刀を返すとシッマは表情をしょぼんとさせた。
「俺、Aを守る役目なのに……大丈夫なんかな」
その言葉が純粋で、嬉しくて、私はシッマの頭を撫でる。
私は何も言わない。代わりに、ずっと撫でた。
「…………」
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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時