第二十七章 ページ27
鬱大先生side
一瞬で空気が凍り付いたのがわかった。
全員が冷や汗を流し、襲ってくるそれに少なからず怯える。
__それの正体は殺気。
だが、誰がすぐにそれを理解できるだろうか。
その殺気が、Aちゃんから発せられているということを。
普段の彼女からは信じられない程の、鋭い目つき。
それが今、俺に向けられている。
女癖の悪い俺は、過去何度も女を怒らせてしまうことがあった。
しかし、怒ったとしても自分より弱い奴が騒いでいる程度にしか思わない。
だから……Aちゃんを怖いと思っている自分に驚いたし、何よりAちゃんの変わり様に驚いた。
Aちゃんの瞳は変わっている。
二色の色があるが、オッドアイじゃない。
グラデーションのように混ざり合った青と緑。
普通、瞳の色は一色だから、彼女の瞳は異端なのだ。
……別に悪い意味で言ったんじゃない。決して。
むしろ綺麗だと思ったし、彼女らしいと言うつもりだった。
だからこそ、彼女が殺気を露わにしたことが衝撃で、混乱した。
「えっと……Aちゃん?」
『…………』
「い、良い意味で言ったんやで……?」
『…………』
「……悪く言ったわけじゃ……」
「A」
グルちゃんの言葉でAちゃんはハッとしたように殺気を解く。
本人は無自覚みたいやけど……。
『……あ、えっと?』
「疲れているならもう今日は休め」
『……いや、疲れては…………あぁ、うん。部屋に戻るね』
Aちゃんは誰とも目を合わせずに出ていった。
当分目を合わせてはくれんのやろうなぁ……。
「大先生、見事に地雷踏んだな」
「シャオちゃんだって気になってたやん。……でも、あれはなんかあるで」
「殺気とかヤバかったもんな……」
「グルッペン。あんたなんか知らんか?」
「……Aの話を信じるなら、あいつの故郷はルンズェの辺りだ。そこで何があったのか調べてみるしかないだろう」
そう言いつつグルちゃんはロボロにアイコンタクトを送る。
ロボロはそれをすぐに察して部屋を出ていく。
こういうところは長年の信頼関係が物を言うね。
「しっかし、あの殺気はなんなんや」
「ゾムが言うほどか……」
「んー、俺のとはちょっと違う気がするけど、大先生よりはすごい」
「なんで基準俺やねん」
ゾムはお気楽にそう言うが、みんなまだ動揺が残ってる。
俺も煙草に火をつけながら、少しばかり後悔していた。
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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時