第二十三章 ページ23
ゾムside
「ごめん」
こんな俺でごめん。
「ごめんな」
ひとりにしてごめん。
「本当に……ごめん」
泣かせて、ごめん。
俺の腕の中で、Aは少しの間、震えていた。
その震えが伝わる度、苦しい。
・
『……もう大丈夫。ごめんね迷惑かけて。ありがとう』
「いや、俺が悪い」
『ううん、そんなこと___』
「そんなことあるんや。今回は俺が悪い」
少し強めに言うとAは小さく頷いた。
『ねえ、ゾム』
「ん」
『どこに行ってたの?』
Aは素直な疑問として聞いているんだろうが、今の俺にとってその質問は責められるのとほぼ同じだった。
……こんな怖い思いさせたあとにプレゼントなんて渡していいのか。
俺はポケットに入れたそれを服の上からそっと撫でる。
いくら何でも空気が読めなさすぎる、な。
「ちょっと、トイレや」
『ゾム。私、全然怒ってないよ』
誤魔化して嘘をついた直後、Aがすぐに言った。
嘘はバレバレみたいだ。
『私、今日ゾムと一緒に過ごせてとっても楽しかった。
確かに怖かったけど、それより何倍も楽しさが大きいの』
「……」
『ゾムは優しすぎるんだよ。ね、本当に悔やまないで』
Aは俺の手を取って優しく包む。
手のひらは温かいけど、指先の冷たい小さな手。
……優しすぎるのはどっちだよ。
自分が怖い目にあったのに他人を気遣うなんて。
……でも、そうだ。
俺はAに喜んでほしかった。
そのために行く店も必死に考えて、話題が無くならないようにして。
もしこれを渡して、少しでも怖さを紛らわせることができるなら。
「A」
『うん?』
「これ、Aに」
小さな箱に入ったそれを差し出す。
Aはきょとんとして、両手で受け取った。
俺と箱を交互に見て、そっと開ける。
取り出された髪飾りがもうほとんど消えかかった光に反射した。
気に入ってくれるかな。
Aは髪飾りをゆっくりと顔に近づけて……。
『あり、がとう……!!』
そして胸に押し当てて、最高に綺麗に笑った。
その仕草が本当に愛おしくて、また抱きしめたい衝動に駆られるのをグッと抑え、Aの手から髪飾りを取る。
「付けたるわ」
髪につけると、Aはくすぐったそうに笑う。
目の腫れも大分引いて、いつもの彼女に戻った。
……帰ろう。
『今日はありがとう』
「……おん」
・
「言い訳があるなら聞こう」
「ちなみに何言っても粛清な」
「……」
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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時