第二十章 ページ20
初めて行った城下町に、私は目を奪われた。
活気であふれるその場所は、老若男女問わずみんなが楽しそうに笑い合い、賑わっている。
お洒落な建物が立ち並び、ガラスのショーウィンドウには煌びやかな物が飾られ、通り過ぎる人々の足を止めていた。
空腹を誘う料理の匂いが何処かしこから漂い、幸せな気持ちを与えてくれる。
陽気な誰かの歌に、さまざまな楽器のメロディーが重なり賑やかさを増す。
『わあぁ……!!』
自然とこぼれる笑顔。
きっと道行く人たちが笑顔な理由は自分と同じだな。
その場の雰囲気自体が人を笑顔にしているように感じる。
『凄いね、ゾム!凄いなぁ……!』
人の事を言えないぐらい、子供のようにはしゃぐ私をゾムはからかうでもなく馬鹿にするでもなく、目を細めて見つめていた。
「あぁ、そうやな」
優し気なその微笑みに、言葉に、ほんの少しだけ変な感じになる。
なんて言えばいいのかわからないけど。
なんて表現すればいいかわからないけど。
……私もつられて微笑んでしまうような、そんな感じ。
「案内するで、はぐれんようにな」
『うん、よろしくね』
いつもより歩幅の小さな彼の少し後ろをついて歩いた。
。・*・。・*・。・*・。・*・。・*・。・*・。
「ここの飯めっちゃ美味いやろ?」
『うん。私好きだなぁ』
ゾムオススメのレストランでご飯を食べて。
「A、なんか向こうでやってるで!」
『わ、待ってよー!』
ストリートパフォーマンスを見て。
「え、A楽器弾けるん?」
『うん、ハープだけだけど』
「めっちゃ凄いやん!」
他愛もない話をして。
「あらあら、彼氏さんと彼女さん?」
「ち、ちがっ!」
『……えへへ』
少し照れくさくてなって。
そんな幸せな時間を私たちは過ごした。
思えば、初めての事だらけ。
でも、不安なんて一切なかった。
そんな気持ちを塗りつぶすぐらい、楽しかったから。
「あ、Aちょっとここで待っとってくれん?」
『うん?わかった』
日が暮れてきた頃、城下町の中央にある噴水でゾムがそう言ってどこかに走って行った。
こんな時間になると人が急に少なくなる。
昼間とのその違いが少しだけ心を不安にさせた。
噴水の水の音が一定のようで不安定な音を奏で、家路に帰る人々の靴の音は次第に少なくなる。
ひとりになって息をつくと楽しさで薄れていた疲れを感じた。
ゾム、早く戻ってこないかな。
ふと、そう思った時だ。
「君一人?」
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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時