検索窓
今日:13 hit、昨日:21 hit、合計:115,427 hit

第十六章 ページ16

『グ、グルッペン……!』
「トントンはAには甘いから仕事が遅れても平気だ」
『そういう問題じゃなくて!』


私の言葉なんてお構いなしにぐいぐいと引っ張られる。
抵抗しようとしても力が強くて振りほどけない。
すれ違う使用人の人たちが微笑ましそうに私たちを見て笑っている。
なんでだ。


「トントンに言うなよ?」
「「かしこまりました〜」」


グルッペンの言葉に軽く了解の意を返す彼女たち。
とめてとめて!!


それから少し行くと、グルッペンが急に止まった。
何事かと話しかけようとすると、唇に彼の指が触れる。
しずかに、のジェスチャーだった。
そして曲がり角に隠れる。


私は何をするわけでもなくグルッペンの言う通りに黙って動かない。
状況が理解できないでいると、声が聞こえた。


「グルッペンが何処に行ったか知らんか」


声からでも怒っているのがわかるトントンの声。
それに対応するさっきとは別の使用人の人の困った声。
……もう探し始めてるんだ。


使用人の人は本当に知らないようで、申し訳ございませんと謝っている。
あの人は何も悪くないのに。
そう思うと、今の自分の行動に罪悪感を感じる。


「スリルがあって楽しいな」


トントンがどこかに行った後、そんなことを言った彼にデコピンをかます。
まったく、この人は……。


『トントンに迷惑かけないでくださいよ。ただでさえ忙しいんですから』


何日も連続で徹夜し、疲れ切ったトントンの姿はあんまり見たくない。
私が一生懸命仕事するのも、少しでもトントンの負担を減らしたいからだ。
その意味も込めてグルッペンにそう言うと


「…………」


何故か不機嫌になる。


「……トントンばっかりか」
『え?うわっ』


そしてまた引っ張られ、進んでいく。
私の手を握る彼の力がさっきより強くなっていた。

第十七章→←第十五章



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (69 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
189人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。