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第十五章 ページ15

あれから二週間が経った。
私の怪我はすっかり治り、トントンの仕事を手伝う日々。
最初はやっぱり慣れなくて、ミスは少なかったけど遅かった。
それでもトントンが支えてくれたお陰で、最近はそれなりにスムーズに出来る。


幹部の人たちとの関係も前より親しくなって、もう敬語も使わないようになった。
……グルッペン以外。


理由は単純。
いくら仲良くなっても彼は総統なのだ。
国のトップに敬語なし、というのは躊躇われる。
敬称はなんとか外せたものの……うん。


といっても私だって努力はしている。
だから徐々に敬語じゃない時が増えていると思う。
当の本人はまだ全然不満そうだけど。


そんなだから、グルッペンと話す度に彼が駄々をこね、いじけてしまうという光景がお決まりになっていた。
カリスマがあって怖そうだけど、実は甘党で子供みたいな彼。
この国の幹部もみんなギャップだらけだ。
もしかして私も何らかのギャップを身につけないといけないのかな?なんて思った程。


「A」


そうこう考え事をしていると仕事中の私の部屋にグルッペンが来る。
あー、またか、と心の中で溜め息をひとつ……ふたつみっつ。


『何か用事です?』
「一緒にお茶しないか?」
『……仕事中です』


何か用事ですかって、聞かなくてもわかってる。
毎日のように来てその度に誘われるから。
私がいつもの理由で断ると、彼はいつものように顔をしかめる。
そして、決まって私に抱き着いてくるのだ。


「敬語外してくれないし、一回も付き合ってくれないし……。
 そんなに俺のこと嫌いか?」


不安そうに悲しそうにグルッペンは呟く。
たった二週間ほどの付き合いだけど、彼は私にこんなに甘えるようになった。
その理由はわからないけど、きっと彼は寂しいんだと思う。
幹部のみんなは大体が仕事に追われている……一部の人だけだけど。
そのせいもあって一緒にいられる時間が少ない。


ひとりの寂しさはすごくわかる。
本当は誘いに乗ってあげたい。……でも。


『トントンに頼まれた仕事終わらせなくちゃいけないから』


仕事に関してトントンはすごく厳しくて怖い。
仕事に慣れてきたと言っても一日のノルマを超えるためには最低限の休憩しかできないのだ。
だからグルッペンの誘いは申し訳ないけど……。


「今日ぐらいいいだろう?」
『いや、だから……ってうわぁっ』
「バレなければ大丈夫だ」


私の手を引っ張る彼はニヤリといたずらっ子のように笑った。

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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時

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