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第十一章 ページ11

「大体はこういう感じやけど質問ある?」
『大丈夫です、ありがとうございます』


一時間ぐらいだろうか。
丁寧で分かりやすい説明をトントンさんから教わった。
内容は資料作成の種類やまとめ方など。
たくさんあって苦労したが何とか記憶に留めることは出来たと思う。


……でも。


「やっぱ不安か?」
『……はい』


頭では理解できてもちゃんとできるのだろうか。
やったことない事だらけで、自分に何ができるかわからない。
足を引っ張ってしまったら……。


『わ、私得意なこと何にもなくて……。
 ずっと一人で過ごしてて、人と話すのも慣れてなくて……役に立てるのか』


スーパーネガティブな発言だけど、本当にそう。
見捨てられることがどれだけ恐ろしいか。
……考えただけで体が震える。


「……そんなに心配にならんでええよ」


だけど、そう言ってトントンさんは私の頭を撫でてくれた。
私はびっくりしてバッと顔を上げる。
トントンさんと目が合うと、彼はすぐに目を逸らしてしまった。


「あー、仕事は作業量が多いだけで単純やし、
 ミスがあってもそこまで問題じゃないから……大丈夫や」


私の頭から手をのけながら少し顔の赤くなったトントンさんがどこか必死に言葉を紡ぐ。
私を安心させようとしてくれているのがひしひしと伝わってきて、何とも言えない気持ちに幸せを感じる。


『……えへへ……ありがとうございます』


きっと初めての気持ちだ。
誰かに心配してもらえて、自然に顔が緩んじゃうぐらいに、とっても幸せ。
ありったけの感謝の気持ちを込めて微笑むと、さっきよりも赤くなる彼の顔。
いろいろな表情があって、面白い人だ。


「なあ、敬語とか外してくれてもええんよ?」


説明に使った資料を几帳面にまとめながらトントンさんは言った。
顔をこちらに向けないのは恥ずかしがりやだからなのかな。
少しかわいいな、と思いながら私は再びお礼を伝える。


『うん、ありがとう……トントン』
「……ん」


心なしか嬉しそう。
私もなんだか温かい気持ち。


誰かの名前を敬称なしで読んで、言葉を柔らかくするのは。
きっと初めてだ。




。・*・。・*・。・*・。・*・。・*・。・*・。・*・。・*・。
しばらく日常が続きます。
落ちとか決めてないです……!!
毎日更新目指します。

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リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます!様!?私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー!! (2017年9月3日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ!!リノ様の文章力で妄想が止まりませんww これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(*゚∀゚)b (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます!嬉しいですー!私自身、最初読み間違えたんですよ(笑)、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます!ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです! (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リノ | 作成日時:2017年8月21日 13時

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