音の葉◆序章【山田二郎】

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確か三曲協会への加盟を申し出たのは花宮先生であると、この教室の誰かが言っていた。


彼女自身が三曲協会の組織の人間のうち一人と知り合いだったからとかそんな縁があるらしいけれど、そうやって色んなところに人脈を築いている花宮先生は素直に凄い人だなぁと思う。




三曲を愛する者たちが一斉に集い、各々が楽曲を披露し合う音楽の祭典。

名だたるプロの音楽家や抜群の腕前を持つ学生さん方が多く参加する演奏会であるため、

この演奏会の知らせが来た時、私はてっきり楽器運搬のお手伝いや、会場運営のボランティアスタッフなどに駆り出されるものだとばかり思っていた。



――が。

私はなんと去年、箏歴一年未満のひよっこだったにも関わらず、花宮先生によってこの演奏会に強制参加させられることとなったのだ。

もちろん、観客やお手伝いではなく、一人の出演者として。




勝手につばき野演奏会への出演を取り付けられていたと知った時は本当に驚いて、花宮先生に慌てて辞退を申し出ようとした記憶がある。




『花宮先生！ まだお箏を始めて一年も経ってない私が、そんなにもレベルの高い人たちが集まる演奏会に出演するのは流石に無理があるんじゃないかと…だからっ、』

『あら、歴とか関係ある？あなたが納得のいく演奏ができるよう、演奏会当日までに死ぬほど練習すれば済む話じゃない』

『そ、そうは、言っても、…！』


『何もいきなり独奏しろって言ってるわけじゃないのよ？あなたには花笑み(ウチ)の精鋭陣の合奏に参加してもらうだけだから安心なさい』

『いや、だからこそ迷惑かけそうで怖いというか…』






『――ねえ。あなたさっきから、この私によく口答えするのね？』

『すみませんすみませんなんでもないです！！ガンバリマス！！！』




――私の言い分なんて、『鬼の花宮』の異名を持つ花宮先生の前には全く意味を成さず。

私は結局、前述の通り泣く泣くつばき野演奏会に一人の奏者として強制参加させられることとなったのだ。

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