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「今日のお稽古はこれでおしまいにします。ありがとうございました」
正座をしたままの花宮先生が、そう言って美しい所作でゆっくりと頭を落とす。
「ありがとうございました」
私もできるだけそれに倣って淑やかに手を前で添えてみるなどするけれど、やはり先生の麗しさには遠く及ばない。
数秒ほど頭を下げた状態で姿勢を保ったのち、今度はゆっくりと
花宮先生は私より早く顔を上げていたようで、僅かに遅れて私も元の姿勢に戻った。
「お疲れ様。どうだった?自分的に今日の手応えは」
「いえ、手応えとかはそんなに感じていない…ですかね」
「そう。まだ自分の実力に満足していないようで安心したわ。慢心は人の成長を止めるからね」
「はあ…」
淀みなく言い切った花宮先生の艶のある黒髪を、私はじっと見つめた。彼女の髪は肩より上で良い具合に切り揃えられているため、色気溢れる首筋のラインがいつも丸見え。
巷ではこの首元から醸し出される色気だけで、彼女が過去五十人の男女の心を奪ったとか奪ってないとか。
もちろんこれは噂だしあまりにも信憑性に欠けているため、単なる例え話のようなものとしてしか私は捉えていないのだが。
彼女――花宮
同時に、その愛らしい名前と麗しき容姿にそぐわぬほどサバサバした性格を持っていることで有名だった。
世間的には『
なお、その渾名を使っていることがバレた暁には、次のお稽古時に彼女から世にも有り難き猛特訓を課されるのだ。
その猛特訓を受けた子たちが翌日には皆生ける屍と化して畳に伏しているのを、私は今まで何度も目にしてきた。
そんなわけだから、私は死んでも彼らと同じ過ちはしない。絶対に。だって、自分の命は惜しいもの。
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Rizuki(プロフ) - ここちさん» 恋愛要素少なめの本作ですので、ネット小説の需要を考えると多くの人の目に留まる作品ではないのかもしれませんが…こうやってあなた様のように温かなお言葉をくれる読者様がいることを私は誇りに思います。ありがとうございます、そのお言葉とても励みになりました。 (2021年4月22日 11時) (レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
Rizuki(プロフ) - すぎさん» 等身大に書けていましたでしょうか…!?ありがとうございます、そのお言葉とても自信になります(; ;) (2021年4月22日 11時) (レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
Rizuki(プロフ) - 通行人さん» 「文字列が美しい」なんて、最上級の褒め言葉ですよ…!(; ;)そんな風に言って頂けて非常に恐れ多いところですが、ありがとうございます。とても嬉しいです。気が向かれましたら是非またいらしてください、いつでもお待ちしております。 (2021年4月22日 11時) (レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
Rizuki(プロフ) - ハネムさん» 登場人物も設定も拘りに拘り抜いていた箇所なので、そこに気づいてくださるハネムちゃんのような読者様がいらっしゃると本当に心強い!今後も恐るべき亀更新で進んでいきますが、温かく見守って頂けますと幸いです。いつもありがとうございます大好き(; ;) (2021年4月22日 11時) (レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
Rizuki(プロフ) - 夕顔さん» 信じられないほどの亀更新だったにも関わらず、序章完結まで温かく見守ってくださったこと、とても光栄に思います。自由気ままに書いておりますので、もしまたご都合が合いましたら遊びにいらしてください。この度はご感想ありがとうございました。 (2021年4月22日 8時) (レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rizuki | 作成日時:2021年1月7日 21時