13 ページ14
*＊
本日も無事に学校の授業を終え、迎えた放課後。
私は花宮先生に言われた例の楽譜を手に入れるため、第二音楽準備室に隣接した第二音楽室の前に来ていた。
「ここに来たの、初めてだなぁ…」
花宮先生のおっしゃっていた第二音楽準備室は校舎の最上階の片隅にあり、先程説明した通り第二音楽室に隣接されている。
この第二音楽室は、三年生が選択授業で音楽を選んだ場合に使われることがあるらしいが、選択する生徒の人数も授業回数もそこまで多くないため基本的に人の出入りは少ない。
授業で使った経験もない私にとって、実際にここへ足を運ぶのは初めてのことだった。
第二音楽室の重たいドアを開けると独特の匂いが鼻をついた。中に踏み入れ、出入口のすぐ横に設置された下駄箱の中に上靴をしまう。
第二音楽室は定期的に掃除もなされているようで、グランドピアノのそばには掃除当番表が置いてあった。その内容から察するに、どうやらここの掃除は一年生が受け持っているらしい。
とはいえやはり授業以外でこの音楽室が殆ど使われていないことは一目瞭然で、カーテンは開きっぱなし、閉じられた窓の外側には古びた耐震用の格子が
電気もつけずに室内の奥へと進み、準備室のドアの前に立つ。
第二音楽準備室に、廊下と通ずる出入口は存在しない。
そのためここに入るときには必ず一度音楽室を通らなければならない。それはもちろん、準備室を出るときにも同じこと。
(準備室にも出入口をちゃんと付ければいいのに。不便だなぁ)
心の中でそう愚痴を吐きつつ、私は準備室の古びたドアの取っ手に手をかけた。
中に入るとカビ臭い匂いが鼻腔を刺激し、その異臭の程度に顔を顰める。
入口横の電気を点けて中を見渡すと、もう長く使われていないことの窺える音楽関連の資料集や立奏譜面台など、多くの備品が目に入った。
また、音楽室と準備室を境目に床は防音カーペットから畳に変わっていて。
それを見て、なるほどここがかつて箏曲部の部室として使われていた名残はちゃんと残っているようだと、私は一人納得した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Rizuki(プロフ) - ここちさん» 恋愛要素少なめの本作ですので、ネット小説の需要を考えると多くの人の目に留まる作品ではないのかもしれませんが…こうやってあなた様のように温かなお言葉をくれる読者様がいることを私は誇りに思います。ありがとうございます、そのお言葉とても励みになりました。 (2021年4月22日 11時) (
レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
Rizuki(プロフ) - すぎさん» 等身大に書けていましたでしょうか…！？ありがとうございます、そのお言葉とても自信になります(; ;) (2021年4月22日 11時) (レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
Rizuki(プロフ) - 通行人さん» 「文字列が美しい」なんて、最上級の褒め言葉ですよ…！(; ;)そんな風に言って頂けて非常に恐れ多いところですが、ありがとうございます。とても嬉しいです。気が向かれましたら是非またいらしてください、いつでもお待ちしております。 (2021年4月22日 11時) (レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
Rizuki(プロフ) - ハネムさん» 登場人物も設定も拘りに拘り抜いていた箇所なので、そこに気づいてくださるハネムちゃんのような読者様がいらっしゃると本当に心強い！今後も恐るべき亀更新で進んでいきますが、温かく見守って頂けますと幸いです。いつもありがとうございます大好き(; ;) (2021年4月22日 11時) (レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
Rizuki(プロフ) - 夕顔さん» 信じられないほどの亀更新だったにも関わらず、序章完結まで温かく見守ってくださったこと、とても光栄に思います。自由気ままに書いておりますので、もしまたご都合が合いましたら遊びにいらしてください。この度はご感想ありがとうございました。 (2021年4月22日 8時) (レス) id: 1b129a5f85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Rizuki | 作成日時：2021年1月7日 21時
