2話 ページ4
いつも通り書類仕事をしていると、大きな音を立てて乱暴に部屋の扉が開く。
それと同時に、俺は机の横に立てかけてある鋼の盾を構えた。
一瞬後に、轟音と共に焦げ臭い匂いが漂う。
「チ、土方さんの癖に姑息な真似しやがって」
「土方さんの癖にってなんだ。そっちこそ総悟の癖に上司にバズーカ打つんじゃねえ。」
「俺はいいんでさァ。そういうキャラですからね」
「キャラとかメタい事言うのやめない?」
てめーも仕事あるだろ、と総悟に言い放つと、
俺は机に向き直った。
その後渋々総悟がそこを去ると、俺はずっと書類を片付けていた。
始末書を書かされるこっちの身にもなれよ総悟。
サボんじゃねえよ…
3時間ほど経っただろうか。
そろそろ手が疲れてきたので、席を立って肩を回す。
すると控えめなノックの音が聞こえた。
「どうぞ。」
少し投げやりに答えると、Aが部屋に入ってきた。
手にはコップが乗ったトレーを持っている。
「どうした、A」
「土方さんが書類仕事頑張ってるって聞いて、差し入れ持ってきました。コーヒー飲めますよね?」
「ああ。」
どうせならマヨの方が望ましいんだがな。
コーヒーを受け取ろうとすると、Aがにやりと
笑う。
すると、彼女は俺の心中を察したかのように
「どうせマヨの方が良いんでしょう?」
と何処からかマヨを取り出し、俺が持っていた
コーヒーと交換する。
「…なんで分かった?」
「私を誰だと思っているんです?真選組女中、
坂田Aですよ?隊士の好みくらい把握してますよ。」
そう言って可愛らしく微笑むA。
俺はその笑顔を見て、マヨを机に置いてから、
再びコーヒーに手をつける。
「あれ、コーヒー飲むんですか?」
「折角Aが持ってきてくれたからな。それに
眠気が来てた頃だから丁度いい」
そこまで言うと、俺はコーヒーをぐいっと飲み干した。
なんだか余計に美味いと感じるのは気のせいだろうか。
「ありがとな。美味かった」
「そうですか。良かったです。お仕事、頑張って
くださいね。」
Aが部屋を出て行こうとすると、屯所の玄関の方から誰かの声が聞こえる。
「お客さんですかね?私行ってきます」
客なる者が誰か分かっていた俺は、1人溜息をついた。
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作者名:今井李乃 | 作成日時:2018年10月5日 21時