14話(夢主side) ページ17
何で…どうしてだろう。
もう、昨日のうちに、全て覚悟はしていた。
決まった事なのだから仕方ない。
頑張って裏央さんのいい所見つけて、楽しく暮らそう。
私なら出来る。
そう考えて今日を迎えた筈なのに。
いざ、裏央さんが屯所に私を迎えに来ると、
_切ない。
ただその感情だけが、
私の心を蝕み、彼について行くのを拒ませる様だった。
長い間ここで働いて来た。
たくさん笑った。
たくさん喋った。
たくさん元気を貰った。
たくさん勇気を貰った。
覚悟を決めても、やはり思い出の詰まった真選組を離れるのは辛かった。
そして1番の心残りは…
土方さんだった。
何も思っていない筈なのにだ。
どうにも、特に土方さんと離れるのが切ない。
喋っている時、1番楽しかった。
私を理解し、1番寄り添ってくれた。
本当に優しくて、でもその優しさが苦しくて。
目の前の裏央さんの元に行きたいなんて思えないけど、このままここに居て駄々をこねても、迷惑をかけるだけだ。
ならいっそ行ってしまおう…と思ったその時。
土方さんの声が聞こえたのだ。
助けに来てくれた…?いや、それは自惚だろう。
でも、台詞からして止めに来てくれたらしい。
嬉しい。正直言って。
ややあって、裏央さんがこんな事を言う。
「土方…さん。ちょっと来てくれませんか。
Aはそこで待ってて。」
「あっ…」
ただならぬ雰囲気を感じ取るも、口から出たのは
そんなか細い声だけだった。
「すぐ戻る、心配すんな」
私の髪を軽く撫で、土方さんは裏央さんと外に出て行った。
呆然と立ち尽くす私に、近藤さんが
「そこ、寒いだろう。中に入りなさい」
と促してくれた。
「ったく、そんな顔して惨めですねィ、A。
もーちっとしっかりしなせェ。」
いつもの涼しい顔で、沖田さんが言う。
そんな2人の言葉が…
…どんな言葉であろうと。
安心した。
ずっとここに居たいと思った。
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作者名:今井李乃 | 作成日時:2018年10月5日 21時