8話 ページ11
「…」
「ちょっ、土方さん!マヨネーズこぼしてます!」
そんなAの声ではっとした。
気付くとマヨネーズをこぼしていた。
「わ、悪い…」
「うわあ土方さん無いわー。これは切腹だわー。」
人をおちょくるような挑発的な笑顔で言う総悟に
若干腹を立てながらも、こぼしたマヨネーズを拭う。
「トシ、どうした?今日おかしいぞ?」
「大丈夫だよ、近藤さん。心配しないでくれ」
不安げな表情で言う近藤さんにそう返すと、俺は
さっさと晩飯を食って自室に戻った。
「うーん…」
思わず唸りながら考える。
しかし、菱根家…
彼奴が元気無かったのも頷けるな…
…打開策が思い浮かばない。
全くと言って良いほど。
「今日は寝るかな…」
そう呟き、俺はその日を特に進捗も無く終えた。
「えいっ!やあっ!」
「とうっ!」
そんな声が響くは道場だ。
今俺を含む真選組の隊士達は稽古をしている。
そして俺と総悟は今手合わせをしているのだが…
「…っ!?」
「いただき」
「沖田隊長、一本!」
審判をしていたザキが声を上げる。
くそ、今日は調子が出ねえ…
「何ですかィ土方さん。今日は調子が悪いですねィ?女でも出来ましたかィ?」
「冗談じゃねえよ。俺にも調子が悪い日くれえあるんだよ」
投げやりにそう返し、少し端にはけて休憩しようとすると、Aが声を掛けてくる。
「土方さん、珍しいですね。あんなすぐに沖田さんに一本取られる事なんて、今までなかったんじゃないですか?」
「ああ。今日はどうにも調子が出ねえ。」
「仕事のしすぎですよ。少しは休んでください。
ね?」
そうやって上品に優しく微笑むAの顔に、彼奴の顔が重なった。
「…っ!…ああ。ありがとな。」
でも大丈夫だ、と続け、俺は立ち上がる。
そのくだりを見ていたらしき隊士達が俺に声をかける。
「副長!いつの間にAさんと仲良くなったんです?私、気になります」
「いやもう意味分かんないわ。色々手伝ってくれてるからだよ、勘違いすんな」
「えー」
「何がえーだ。てめーらはさっさと稽古しろ」
呆れてそう返すと、彼等は素直に稽古に戻っていった。
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作者名:今井李乃 | 作成日時:2018年10月5日 21時