第二十四話：歓迎 ページ26
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武装探偵社 社長
福沢諭吉───
能力名 『
部屋に入ってきたのは、和服を着た初老の男。
冴え冴えした意志の強そうな鋭い眼を持ち、視線が交わるだけで圧倒されそうだった。
「社長」
「しゃ、社長！？」
あの国木田が深々と頭を下げるものだから、敦は二度見した。
何故ここに社長が居るのか、と。
「そこの太宰めが『有能なる若者が二人居る』と云うゆえ、その魂の真贋試させて貰った」
「君達を社員に推薦したのだけど、如何せん敦君は区の災害指定害獣。Aちゃんは軍警に保護対象とされている訳アリ。
保護するか社内でも揉めてね。
で、社長の一声でこうなった。と」
太宰はAの隣に行くと、「君の事情はちゃんと伝えてある」と耳打ちをした。
何故今云うのかは判らないが、彼なりの気遣いなのだろう。
「で、社長.....結果は？」
国木田が訊いたと同時に、社内に沈黙が降りる。
自分を犠牲にして爆弾に覆い被さった敦と、
自分を犠牲にして人質を救おうとしたAを、
交互に見て、福沢は踵を返した。
「太宰に一任する」
と、言葉を添えて。
「合格だってさ」
勝手に物事が進んでいってしまってる。
「つ、つまり........？僕とAさんに斡旋する仕事っていうのは此処の......？」
漸く察したのか、敦が太宰の顔を見上げる。
太宰はくすりと微笑むと、二人を歓迎するかのように両手を開いてこう云った。
「武装探偵社へようこそ」
横から人質役の少女が、爆弾魔役の青年に飛びつきながら二人に話しかける。
「うふ、よろしくお願いしますわ」
「い、痛い！そこ痛いってばナオミごめん、ごめんって！」
谷崎潤一郎─────
能力名『細雪』
その妹─────
ナオミ。
ふと我に帰ったように、敦は後退りする。
「僕達を試すためだけに....こんな大掛かりな仕掛けを？」
「この位で驚いてちゃ身が保たないよ？」
カサカサと虫のごとく必死に足を動かして、逃げようとする。
「いやいや！こんな無茶で物騒な職場僕無理ですよ！」
「おや。君が無理と云うなら強制はできないね」
その言葉に、敦の表情が明るくなる。
「となると、君が住んでる社員寮引き払わないと」
が、その言葉で地獄に突き落とされた。
寮の食費と電話の払いもあるが。と付け加えて。
選択肢は、無い。
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作者名：椿 | 作成日時：2024年4月16日 20時
