第二十一話：無意味な対話 ページ23
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「や、ややめなさーい！親御さんが泣いているよ！」
爆弾魔の男以上に挙動不審な様子の敦に、隣に立つAさえも引いたような眼で見る。
男に「何だアンタ」と怒鳴られるなり、兎のように怯えた。
「ぼぼ、僕は騒ぎを聞きつけた一般市民ですっ！」
「...そこのアンタは！？」
突然話を振られたAは考えるように黙ると、
『この探偵社に依頼をしに来た依頼人だけど』
妙にはっきりと響く声で、動じずそう云った。
『此処に事件を解決してくれる優秀な探偵が居ると訊いて』
その場で創り上げた嘘っぱちを堂々とした態度で云うものだから、太宰は感心した。
彼女には演者の才能がある。
そこでAは男を説得しようと話しかけた。
『それを爆破すればアンタも死ぬことになる。身体は爆破で散ってただの肉塊だ。そんなことになりたくないだろ』
「五月蝿い！皆んな死ねば良いンだ！」
そもそも人質を取って爆破すると云い出す人間に説得しようとするだけ無駄だ。
一瞬で諦めたようにAは溜息を吐いた。
『そ』
彼女は、男の方に腕を伸ばして向ける。
そして弾指の形にすると、パチン！と弾けるような音と共に“火花が散った”。
その火花は弾丸のように放たれると、男の眼前で爆破する。
先日太宰が見たような爆破だった。
「うわッ！！」
男は驚きのあまり一瞬だけ眩しそうに目を瞑り、体勢を崩した。
『私はこれ以上なンもしないからね』
そう呟くと、Aは国木田と太宰に目配りをする。
「充分だ」と太宰が告げると、隣の国木田が立ち上がって手帳を取り出した。
「手帳の
異能力───【独歩吟客】
国木田は「鉄線銃」と万年筆を走らせて、書いた頁を切り取る。
すると頁が
銃口から銛が飛び出し、持っていた爆弾のスイッチを引っ掛けて奪い取る。
「確保ッ！」
国木田は男の顎を蹴り上げて、身柄を確保した。
爆破されなかった爆弾を見て、敦はほっと胸を撫で下ろす。
腰を抜かしていたためまたもやAに腕を引っ張られて起き上がった。
トンッ
「ぶッ！」 ピッ！
敦が誰かから背中を押されて、頭から転げる。
転げたと同時に「ピッ」と音がしたことに違和感を覚えて顔を上げると、
彼の掌には押されたスイッチがあった。
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作者名：椿 | 作成日時：2024年4月16日 20時
