第十一話：熱を帯びた ページ12
.
突然起こった爆発は、白虎とAを呑み込んだ。
熱気、爆風、轟音、火花。
遠くに居た太宰の顔に、爆風と共に熱気が覆いかかる。
吹き飛ばされそうな勢いに太宰は腕で顔を隠すと、劈くような白虎の呻き声が訊こえた。
「....これは驚いた」
思いがけない光景に太宰は微笑する。
目先には白虎が爆発で負った負傷で身を縮めており、それとは反対にAはただ突っ立っていた。
『............』
彼女も爆発に巻き込まれたのにも関わらず、傷一つ無く、むしろ涼しげな表情で白虎を見下ろしていた。
まるで何事もなかったかのように。
否、彼女は爆発に巻き込まれたんじゃない。
“
太宰が確かに見た、火花の散る彼女の指先。身体から火花が出るなど“通常”の人間業ではない。
異能を持った異能者である人間を除いては。
爆発、又は爆弾の異能。
嗚呼そうか。
矢張り、彼女はあの。
「....君のことは後で訊こうか」
白虎の負った傷が癒えていることに気がつくと、太宰はそう云って白虎の元へと向かう。
白虎は太宰に気付くと襲い掛かろうとした。
「獣に喰い殺される最期というのも中々悪くはないが、君では私を殺せない」
飛び掛かろうとした白虎の額に、彼の指先が触れる。
触れたと同時に白虎はフッと消えていき、大柄だった姿が細身な敦の姿へと変わった。
「私の能力は───
凡ゆる他の能力を触れただけで無効化する」
太宰は気を失い倒れかける敦を身体で受け止めた。
しかし。
「男と抱き合う趣味は無い」
と、太宰は敦を無慈悲に離す。
敦はビタンッと訊くだけでも痛々しい音を鳴らして、氷のように冷たい床に這い蹲った。
「さて、と.......」
そして、Aの方に振り返った。
「君のことについて訊こうかな」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：椿 | 作成日時：2024年4月16日 20時
