第十話：指先の火花 ページ11
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白虎は唸り声を上げて、太宰に襲い掛かる。
太宰は攻撃が当たりそうなところで左に避けると、白虎は襲い掛かった勢いで壁に突っ込んだ。
突っ込んだ壁は、大きく破損して凹んでいた。
突っ込んだ数秒後に、また彼の元に駆ける。
太宰は反射的に腰を屈めた。
「よっ」
白虎は目の前の木箱を木っ端微塵に砕いた。
原型をとどめなくなった木箱は、まるで砂を裂くように容易く砕かれたのだ。
太宰は後ろに下がって、攻撃を避ける。
そして木っ端微塵になった木箱を見るなり、物珍しそうに「おぉ」と声を出して太宰は感心した。
「こりゃ凄い力だ。人の首くらい簡単にへし折れる」
すると白虎は、突然太宰から視線を外す。
何かを探すように、辺りをギョロリと見渡して見た。
白虎の目先には、Aが居た。
野生から来る本能からか、男である太宰よりも狩りやすような女のAに標的を変えたのだ。
飢えた獣らしい、と云えばそうも云える判断だった。
刃のように鋭く光る金眼が、Aを捉える。
「しまった....！」
太宰が気付いた頃には、もう遅い。
彼女の眼前には大柄な白虎がおり、彼が其処に追い付けるような距離ではなかった。
『あ、』
Aの視線が、凍ったように止まる。
限りなく青灰色に近い鉛色の瞳と、
夜の月のように輝く金色の瞳。
時間が止まったように、互いの視線が交わる。
間に合わない。
「Aちゃん───────────」
そう云った時、太宰は確かに見た。
彼女の指先に、“火花”が散っていたのを。
それを見たと同時に、
飛ばされそうな爆風と熱気が太宰を襲った。
それが“爆発”だと気付くのには、
数秒掛かった。
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作者名：椿 | 作成日時：2024年4月16日 20時
