陸 ページ6
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私が斎村に来てから早2週間が経った。
8月ももうすぐ中旬に差しかかろうかという頃で、昼間はジリジリと焼け付くような暑さを放つ太陽が夏本番とでも言いたげに今日も地上を照らしている。
人間関係の方は上手く行っていて、あの日以来特に変わったことも無くみんなとの距離も順調に縮められている。
斎村についても色んなことを知った。
村民全員がこの村出身とか神ちゃんの家が村長の家系だとか。
それからお気に入りの場所も見つけた。
『んー!!ビューティフォー!!』
辺り一面に広がる彼岸花の花畑。移住初日に部屋から見えた赤い花は彼岸花という花で、この辺の土地に群生しているんだとか。
花の1輪1輪は可憐なのに、それらが無数に寄り集まって織り成すフィールドは、毒々しいくらい鮮やかな赤で、少しの不気味さを醸し他者を寄せ付けない。それなのに見るものを惹き付け魅了し虜にするのだ。
少し怖いけど美しい。
孤高なのに誘われる。
一種の中毒みたいなものか。
横たわっている木の幹に腰掛けこの景色を眺めながらボケーっとするのが最近のマイブーム。
今日も例の如くボケーっとしていたら急に後ろから、わっ!!、と誰かに脅かされた。
『ギャッ』
振り返ればしげがお腹を抱えて笑っている。こんちくしょう、またやられたぜ。
このところ私はすっかりしげのおもちゃになりつつある。なんでも反応がツボらしい。
『あー、もう。油断も隙もあったもんじゃないわ。』
「いや、Aが簡単過ぎんねん。面白いくらい思い通りに引っかかってくれるから。」
「流星に負けず劣らずの天然やな。」
『そんなに天然じゃないし』
「本物の天然は自覚無いって言うでー?」
『何だとー!?』
こんな風に2人でふざけ合って、じゃれ合って。
普通の友達の筈なのに、胸が高鳴って、少し照れてしまう。
それもこの2週間で変わったことの1つだ。
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作者名:イト | 作成日時:2018年6月17日 16時