呪術廻戦［短編集］

□ ページ20

『何しようとしたんだよ、今』

傑の腕を掴んだ己の手に力を込めるが、その掴んだ腕にはもう力は篭っていなかった

夏「……君はこの世界をどう思う？」

は？なんだよ急に、という顔をしているであろう俺を見て傑はそのスンとした顔を崩さずに言葉を続けた


夏「私達は呪術師で、さっきの少女達も呪いの見える人間だ。この世界において私達という存在は欠けてはならない存在。だが非術師(アレ)はどうだ？」

そう言って状況をあまり理解できていない村の人達を指差した

夏「呪いも見えないくせに呪いを生む。負の連鎖の象徴だよ。アイツらがいるから私達の仲間は死にゆくんだ」

そう話す傑の目は、本当にこの男が夏油傑なのかと疑いを持つほどに暗かった

夏「自らが生み出すモノがどれだけ被害を及ぼすかも知らずに、挙句の果てには呪いの見える者達を否定ときた。…私はもう彼らを人間として見ることはできない」

『…傑、』

夏「強いはずの私達が何故弱い猿共に足並みを揃えなければならないのか、ずっと、ずっと考えてた。おかしいと思っていたんだ。私は私が呪霊を取り込むことの意味さえ今では見出すことさえできない」

この世界は間違っているんだと。非術師のために呪術師が死ぬなんておかしいことだと

呪術師だけの世界を創るべきなのだと

傑はそう言い放った


『……あの子達を閉じ込めてたことについてはこの人達にも罰は下る。…帰ろう、傑』

夏「………」

掴んでいた腕を離して、手を握った。そのまま歩き出すと傑は手を離すことなくついてきた


『俺はさ、バカだから傑がそうやって苦しんでたことにも気づかなかったし、そういうことを考えたこともなかった』

俺達は人を守るために力を持って生まれたんだって思ってるし、非術師を守るために俺達はあるんだって思ってる

それを教えてくれたのは、誰でもない傑だ

『傑の意見が間違ってるとも思わない。俺も仲間が死ぬのは悲しいし、それを目の当たりにする度に助かった人達の安心した笑顔を想像すると嫌になることだってある』

助かって良かったとは思う。でもこの任務にさえ行かなければ仲間は死なずに済んだ。なんて嫌なことを考える自分もいる

それを押し殺している者は少なからず他にもいるだろう

『それでも俺達には力があるんだ。…それを守ることに使いたくないなら使わなくていい。呪霊なんて取り込みたくないなら取り込まなくていい』

俺はもう一度手に力を込めた

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