違う匂い[女主] ページ1
夏油傑が離反したらしい
その報せを受けて、私はいつの間にか彼の部屋の前で呆然と立ち尽くしていた
ノックをしようとして、けれどもうしなくてもいいのか、と上げていた手をそのままドアノブを回すのに切り替える
ドアを開けて部屋に入ると大好きなあの優しい匂いを薄く感じて、なんとも言えない気持ちになった
彼が任務に行く前に一緒に課題をしていたからか、机に開かれたままの二人分ノートや教科書
洗い残してある二つのコップ
彼にしては珍しい、綺麗に直されていないベッドのシーツや布団。そして二つの枕
ここは一人部屋のはずなのに、何もかも二人分
ひとつは彼のもので、もうひとつは私のもの
他の同期二人や私に比べて物が少ない彼の部屋に私の物がひとつひとつ増えていくのが嬉しくて、ベッドに座ってこれまた私が前に持参したクッションを抱えた
そしてそのままシーツに体を転がす
クッションをポイッと捨てて代わりに彼が使っていた枕を掴んだ
スン、と鼻をつけて匂うと先程部屋に入った時よりも強く匂いを掠めた
こんなの、彼に見られたらきっと「ヘンタイ」って笑われて、首に顔を埋めてやり返されるんだろうな。そして私も「そっちだって」と、言い返すんだ
『すぐる』
そう口にした瞬間、目は潤いを与え持ち始めたが、知らないフリをしてその日はそのまま眠った
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「久しぶりだね」
何年ぶりかの彼の声がした
振り向くと、何も変わらない彼がいる
いや、彼はあんな趣味の悪い縫い目を額に描いたりしない
「A」
そして伸びてきた手を払った
『触らないで』
「ああ、置いていってしまったこと、怒っているよね。…すまなかった、私も君に会えないのは寂しかったよ」
だから迎えに来た
目の前の男はそう言った
『…ふざけないで。私は貴方なんか知らない』
「酷いなぁ。あんなに私に愛を伝えてきていたというのに」
『私が好きなのは貴方じゃないから』
「他に好きな奴でもできた?」
『昔から私は“夏油傑”しか好きじゃないけど?』
「その夏油傑が私なんだけどなぁ。この体に流れる血も、記憶も、全て何もかも“夏油傑”だよ」
その後もう一度名前を呼ばれた
『その体で勝手に名前を呼ばないで!』
「A」
嫌なほど声が頭に響く
『誰だか知らないけどさっさと私の前から消えて。それとも祓われたい?』
「…残念だよ」
そう言って横を通り過ぎた彼ではない誰かからは、好きじゃない、違う匂いがした
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いちご牛乳(プロフ) - マリイさん» リクエストしてくださるのは本当に嬉しいのですが…今のところ受け付けはしてないので、もし機会があれば書かせていただきます…!m(_ _)m (2021年1月2日 21時) (レス) id: 78f1b03d1a (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - リクエストで「夢主が宿儺様を(悠仁みたいに)食べた」設定と「夢主が呪霊を式神にする(式神にする呪霊は花御で)」設定見たいです (2021年1月2日 16時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
いちご牛乳(プロフ) - ゆうきさん» ありがとうございます!!!リクエストは時間があれば書きたいのでリクエストをしてくださってもいつになるかは分かりません...(>_<;) (2020年12月8日 19時) (レス) id: 78f1b03d1a (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - ヴッ!!最高すぎます; ;!!男主でも女主でもすごくキュンキュンしてます!! リクエストって受け付けてますか? (2020年12月8日 13時) (レス) id: 869cc0f237 (このIDを非表示/違反報告)
いちご牛乳(プロフ) - ゆーちゃろすさん» 嬉しいです〜〜〜!!!(*^^*)頑張ります、!!ありがとうございますっ!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 78f1b03d1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちご牛乳 | 作成日時:2020年11月7日 16時