第二十三話:何故 ページ27
「降谷くん..何故此処へ?」
そう聞いても彼は曖昧に笑うだけだった。
「何か嫌な予感がしたので」
_嫌な予感...か
「.....私思ったんです。今回のように川崎達に死神、死神と言われるのは苦痛しかありませんでしたけど、はっきり言って感謝、しているんです。」
「...感、謝..?」
何を言っているのか分からない、というような彼に構わず私は続ける。
「えぇ、感謝です。...あなたたちと出会ってからの私はすっかり忘れていましたが、私は普通に過ごしてはいけないんです。私が“人を殺した”ということを忘れそうになっていました。」
「..........。」
何も言えないようだった。ただ、ただ私をじっ、と真剣な眼で見ている。
「直接殺した訳ではないですが、両親も、兄も、親友も、私のせいで死んだんです。」
私が、居なければ。そう何度思ったことか。
「私が居なければ両親も兄も親友も死ぬことはなかった。」
「....そんな事」
「今の私に生きている価値なんてない。どうせ、私が死んだって誰も悲しまないですから。」
__ バチン
私を殴ったのは降谷くんだった。
彼の瞳は怒りにみち溢れていた。
「痛っ「ふざけるな!!誰も悲しまない?そんな訳ないだろっ!!」っ..!」
降谷くんがこんなに感情的になったところなんて見たことがなかった。
「俺達がどれだけ心配したと思ってんだ!?しかもそれだけの理由で死のうとするとか馬鹿だろ!!」
それだけの理由って、私の辛さなんて分からないくせに。
気付けば全てが口に出ていた。
「それだけの理由って..私がどれだけ今まで辛かったかしらないでしょう!?私は人殺しだ。でも、誰も私を責めてはくれなかった..!!その辛さが貴方に分かるわけがない!!」
咲のお母さんだって私のせいじゃないって言ってくれた。
でもそれが辛かった、誰も責めてくれないから自分で責めるしかなかった。
「だから、そういうことじゃなくて!!貴女のせいで亡くなった、というなら貴女はその死なせてしまった方たちの分まで生きないといけないんじゃないかと言っているんだ!」
.....なんだそういう事か、
私が死のうとすることは私をかばってくれた彼等への裏切りになるのか。
「はははっ..!!」
「先輩..?」
「すみませんっ...。迷惑を掛けました。やっと自分の心の整理がつきましたよ。」
「....まだなんじゃないですか?」
「え、?」
次の瞬間彼が言った言葉に耳を疑った
「貴女...、_泣いていますよ?」
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