傲岸2 ページ12
｢緊急招集させてしまって済まないね｣
いつもの様な安穏な雰囲気は無い
｢本当ですよ。折角Aとの…｣
煩い黙らっしゃい狗め！と言う声が聞こえない
｢おついちさんは一緒に居なかっただろ｣
｢いいや、一緒に居たもんね？A｣
｢…あの、｣
お母様は…
｢副総合幹部殿が拉致された｣
｢…お父様、ここは私めに｣
長いジャケットを靡かせて足を着いてお辞儀してお願いする
｢いいや、お前には頼まない｣
｢…どうして｣
｢特攻部隊幹部現場へ行け。諜報部隊直ぐに情報を集めろ。データは送ってある｣
慌ただしくも二人の幹部が駆けて行けば残りは3人
｢A、僕達は如何しようか｣
｢…おついちさん｣
何時も言ってしまえば苛つかせる要員でも、こんな時は聞き慣れた声が恋しいもの
｢…A迄も失いたくは無いのだよ。副総合幹部は…妻の奪還は甚だ難しい｣
｢自分の力量で噛み付いて無理なら其れの方が諦めが着くわ。行かせて下さい｣
力を失った足の分をおついちさんが支えて下さる
｢A、今の貴嬢が行っても弟者が困る。分かるね｣
｢でも…私、｣
捨て駒でもいいのに
｢…やれ、小娘よ泣くな｣
おついちさんの胸で泣いていたら一番聞きたい声
｢総合幹部殿、何故此の様な事を｣
｢副総合幹部が不在となれば、敵方は気を抜いて叩き潰し易くなる。其れに、気合が入らないだろう？｣
前線に居る彼等は知らない
｢おついち、お前は十分かえ。妾の方が良かろうに｣
｢流石にAを離すのも、今夜の今夜は仕方無いですね。
親が居なくなれば娘は悲しむモノ
通信機や電機媒体が煩く鳴れば戦場は静寂に包まれた証
｢…敵方の組織も潰れたか。二人共、副総合幹部殿は本部に居る。撤退だ｣
｢やり方が強引ですよ｣
困った様に笑う声が聞こえて安心すれば涙も止まっていた
｢見直したえ、おついち。うちのAを遣るにはまだ程遠いがのぅ｣
｢其れに一番仲が良いのは特攻幹部殿だろう。無駄に足掻かせるな副総合幹部殿｣
｢え？！迂闊だったなぁ…｣
皆で勝手に決めても良いが、未だ私は誰の所有物にもなる気は無い
｢私は何にも縛られませんわ。自由主義者なので｣
涙を拭き切って扉を背にし、部下の車で自宅に戻った
｢…幹部殿も泣かれるのですね｣
｢当たり前じゃないの。人間よ｣
人間宣言でもするかのように泣く事に驚かれたのは心外
夜は未だ深い
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作者名：姫乃 | 作成日時：2019年5月19日 23時
