神様の仰せのままに/os ページ6
「人を刺す」ことは存外簡単な事だ。
家庭用に売られているような果物ナイフでも、ゼロ距離から力を込めれば皮膚と肉を簡単に裂くことができた。
まぁ、流石に骨を折ることはできなかったようで、切先が骨に触れた瞬間右手が痺れてしまったけれど。
あぁ、焦って果物ナイフを抜いたのは失敗だったな。
糸目だった彼が急に目を開いたもんだから、柄にもなく驚いてしまった。
お陰で返り血が飛んでしまった。
やれやれ、私もまだまだだな。
自分と同じ体温の液体に触れるというのはなかなかに気持ち悪い。
気休め程度に手を払うが、ただ赤が床に散るだけだった。
それにしても、オオサマ直属の若い男に金を握らされた時は驚いた。
まさか国と教会が対立するとは思わなかったから。
まぁ、でも関係ない。
私はただ、殺し屋としての責務を果たすのみだ。
だからこうやって真夜中の教会に忍び込み、実質的なトップである枢機卿の腹を刺してるのだ。
人に視認されないこの能力なら造作もないこと。
彼らは能力のことを神からの賜った「奇跡」だなんて呼んでるようだが。
そんな「奇跡」に殺されるだなんて、皮肉なことね。
「まちな、さい」
掠れて死にそうな、否もうすぐ死ぬであろう声が聞こえる。
呼び止められたら人間振り向いてしまうもので、私は何も考えずに彼に首を向けた。
それが正しかったのか、間違っていたのかはわからない。
ただ、全ての始まりだった。
『…遺言くらいは聞いてあげましょう。届ける先がいないのが非常に残念ですが。』
「…神、は、全てを、見ていま、す、」
『カミサマ、ねぇ。』
「貴方の、善行も、悪行も。全てを」
『ふーん。…で？だから私に神罰が下るとでも？』
彼は首を動かして私に視線をよこした。
顔面蒼白で唇が血が滴っていたが、それでも彼は、笑顔だった。
「っ…、お話、ありがとう、ござい、ます。貴方にとって、今日は、忘れられない、日になる、でしょう」
『…は？』
背後で風を切る音。
それはあまりに突然のことで、初動が遅れてしまった。
ガーターベルトに伸ばした右手は絡め取られ、こめかみに今まで感じたことない衝撃が走る。
『っ…あ”ガｯっ？！」
記憶が走馬灯のようによぎることもなく、一瞬にして目の前の光が消えていった。
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りんご(プロフ) - ぼうっきれ、とうさん» ぼうっきれ、とう様 コメントありがとうございます。気に入ってもらえたようで何よりです…!ぼうっきれ、とう様の作品もいつも楽しませて頂いています。これからも更新頑張りますので応援していただければと思います！ (2021年9月19日 20時) (
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作者名：りんご | 作成日時：2021年9月17日 14時
