闇夜に生きる者/sha ページ13
道に、迷ってしまった。
最近流行りの1人キャンプなるものをやってみようとキャンプ場にやってきた。
火をつけるために小枝を集めようと山に入ったはいいものの、泥濘んだ地面に足を取られ崖下へと落ちてしまった。
脚は…動く。
でも、一歩進むごとに鈍い刺激が走り、次の一歩でまた挫いてしまうのではないかという恐怖に襲われる。
これじゃあ…崖上には戻れないな。
しょうがないので、携帯電話を取り出して連絡を試みる。
『…ぇ』
画面の右上には4本のアンテナどころか「圏外」という文字が佇んでいた。
『…詰んだ』
此処から出るにはとりあえずは朝にならないと話にならない。
しょうがない、ここで野宿するしかないのか…
手が届く範囲の葉っぱを集め、鳥の巣のような形にする。
…このくらい、かな。
そこに腰を下ろし、体育座りをした。
いろいろと、疲れた。
寝心地は最悪そのものだがそれ以上に疲れていたのだよう。
瞼を閉じるだけですぐに寝れそうだ。
微睡んでいたその時、瞼越しに光を見た。
瞼を開けその出所を探していると、ざくっざくっという音。
誰か、掘ってる？人が、いる？
スマホのライトをつけて辺りを見渡す。
それが、いけなかった。
「あぁ？なんやお前」
音の先には地面に突っ伏す人とシャベルを携えている人。
真夜中ではあったが、彼の黄色いオーバーオールが鮮血で彩られていることはすぐに分かった。
『…ぇ、あ、ぅ…』
［逃げろ］
本能がそう告げていた。
「質問してんねん、はよ答えろや。」
『ごめんなさっ、あの、私、足挫いて、それで、このことは、言いませんから、』
「あー、足挫いて動かれへんのか」
彼は突っ伏してる人間の腹を蹴ったかと思えば、それは大きな音とともに視界から消えた。
穴に、落としたのか。
「は、怖い？俺が。」
『…』
うんともすんとも答えない。
だってどれが正解か、分かんないから。
「どーせここおっても助けなんかこぉへんし。
寒くて腹減って死ぬ〜ってなるよりは俺が今、楽にしたろうか？」
きひひっと狂ったような笑い声が森にこだまする。
それも、良いのかもしれない。
満月を背景にシャベルを肩に担ぐ殺人鬼は、私の目には紛れのないヒーローとして映っていた。
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りんご(プロフ) - ぼうっきれ、とうさん» ぼうっきれ、とう様 コメントありがとうございます。気に入ってもらえたようで何よりです…!ぼうっきれ、とう様の作品もいつも楽しませて頂いています。これからも更新頑張りますので応援していただければと思います！ (2021年9月19日 20時) (
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作者名：りんご | 作成日時：2021年9月17日 14時
