零さん、あなたって人は……② (ページ23)

今日:36 hit、昨日:5 hit、合計:51,284 hit

転機2 ページ23

HIMERUさんのお願いは、

『トマトジュース？ですか？』

｢はい。私の推理が正しければ、ES施設内の練習室で涼んでいると思いますから……｣

そう言って、キンキンに冷えたトマトジュースの瓶を手渡してきた

『その人って誰なんですか？』

｢………秘密です。とにかく、練習室で涼んでいる人に渡してください。｣

そう言い残して行ってしまった

言われた通り、練習室の並ぶ廊下まで来た

HIMERUさんのことだから、CrazyBの誰かに差し入れだよね……自分で渡すのとか恥ずかしがりそうだし

そんなことを考えていると、一つだけ、電気の付いた部屋があった

ここ、かな……

コンコン…
ノックの、乾いた音が廊下に響く。でも、中から返事はない

『し、失礼します……っ！』

零:｢…………｣ｽﾔｽﾔ

クーラーの効いた部屋で寝ている零さんがいた

私、部屋間違えた？HIMERUさんが零さんに差し入れ？そんなはずない。でも、なんで？

仕方なく、そっと零さんに近づいた

『っ……ごめんね。零さん』

綺麗な顔して眠る零さん。見ているだけで愛おしさが募っていく

『私、ちゃんと零さんに自分の過去のこと言おうと思ってたの……でも、嫌われたらどうしよう…惨めに思われたらどうしようって不安になって言えなかった。それだけ……特別な人だったから』

零さんの寝顔を見ていたら、ポロリと本音が漏れてしまった

『っ！』

ハッとして口を抑える。
零さんが寝ていてよかった。
こんなこと、今更言っても遅いもの……

寝ている頭の近くに、そっとトマトジュースの瓶を置く

『零さん、ごめんね。………今までありがとう』

別れの言葉を告げて、出口へ向かおうと背を向けたその時だった

バサッという音と友にフワッと優しい香りが漂う

じんわりと背中が熱くなっていく

『零……さん？』

抱きしめられていることに気づくには、時間はかからなかった

肩から胸に伸ばされた零さんの腕が、優しく、強く、私を抱擁する

『……っ、どうして……？』

どうして、フッたくせに優しくするの？抱きしめてくれるの？

でも、零さんからの返事はない

『は、離してよっ！！んっ！』

『もう！やだなんて言わないで離してっ！ん！』

手の束縛から逃れようと、振り向いた時

久しく感じるキスの感覚に、ただただ翻弄されて動けない