過去2 ページ13
燐音side
｢顔も可愛くて、愛嬌があって、アイドルとしての才能もある……うらやましいぜ。ほんと」
『………』
天城:｢なんで黙るんだ？ホントのことだろ？｣
『……いよ』
｢ん？｣
『うらやましい人間なんかじゃないよ……』
｢俺は昔、上層部の失態で波に乗り遅れた……捨てられたんだ……だからアイドルを滅ぼす｣
『そう……』
｢お前には分かんねーよ。恵まれた人間にはな…｣
『私は恵まれてるよ。同時に恵まれてない。』
｢は？どーゆー意味？｣
『私……捨て子だもん』
｢…………｣
『捨て子は確かに沢山いる。でも、私は……』
俺が本音を打ち明けたからなのか、Aも自分の過去を話し始めた
『私、兄弟がいたの。お兄ちゃんが。』
｢兄貴？｣
『うん。いつも優しくて……大好きだった……』ｸﾞｽｯ
｢…………｣
『いつも容量の悪い私は、ママとパパに叱られて……叩かれたり、外に追い出されたり……』
Aの過去は、思ったより壮絶だった
『あの日はクリスマスだったんだよね……ホワイトクリスマス。寒い日だったなぁ。雪が降ってて…私を庇って叩かれたお兄ちゃんが死んじゃった」
｢っ！死んだ？｣
『うん。死んじゃったの。その時は"死"がなにか分からなかった。ただ、お兄ちゃんが反応しないから驚いて、お巡りさんのところに行ったの』
｢…………｣
『そしたら、ママとパパは逮捕されて、私は施設に預けられそうになって……』
｢っ………｣
『でも、施設がいっぱいで、私はどこにも引き取って貰えなくて……だから怖くなって逃げたの。』
虐待されてたなんて……知らなかった
胸がズキズキと痛む
『雪の降る暗い夜道を、泣きながら走って走って走って……そしたら、パァーっと視界が明るくなって……ライブをしてた巽兄さんに出会ったの』
｢そ、それで……？｣
『それでね。巽兄さんったら、ライブしてたのに、泣いてる私を見つけるなり駆け寄って保護してくれたの。その日から私は風早家の妹になった』
小さい女の子がどれだけ怖い思いをしただろう…
暗い雪道で風早巽に出会えたことがどれだけ救いだっただろう……
『そのあと兄さんに憧れてアイドルになったけど才能ないし、プロデューサさんに助けて貰って必死に努力した………だから、うらやましい人間なんかじゃないよ』
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作者名：クテシフォンらるるんらるる | 作成日時：2021年5月23日 9時
