47話 ページ47
お店が実は、私の家から徒歩10分くらいの距離にあったらしい。
というのも、知る人ぞ知るお店だったのか、こんなところに焼肉店があったことに実は驚いていたのである。
あの3人と別れて、歩いて帰ることになった私たちは、夜道をゆっくりと歩いていく。
お酒の入った体はポカポカしていて、少し冷たい風が気持ちよかった。
キヨさんがなるべく私の近くに、かつ車道側を歩いてくれる。
私も色が見えるようになった影響か、少し区別ができるようになり、歩くのも前より怖くない。
「あのさ、」
キヨさんが口を開いた。
「今日、楽しかった?」
キヨさんはこちらを見ない。
私も、キヨさんの方を見ないまま、言葉を返した。
「楽しかったですよ。じゃないと、こんなに長引きませんもん」
彼らと過ごしたのはなんと、3時間ほど。
お店を変えずにここまでずっと絶えず話すことが出来たのも、3人が、そしてキヨさんが気を使ってくれたお陰だろう。
「皆さん、本当にいい人ですね」
1番はキヨさんですけど、とは恥ずかしくて言えなかった。
「そりゃ、俺が紹介したし」
自慢げに話しているが、それは自分がすごいと言うより、彼らがすごいと言ってるように見える。
本当に、あの3人との付き合いは長くて、いい関係なんだろう。
「ふふ、羨ましいなぁ」
私がお肉を頬張っている時や、トイレで席を外している時から戻ってきた時に聞こえる彼らの話し声は本当に楽しそうだった。
私の知らないゲームの話や、今企画を進めているイベントの話などで、盛り上がっていた。
寂しさとかは全くなかったが、ただ、ちょっとだけ、羨ましいと思ってしまったのだ。
彼らのような、そういう楽しく話せる相手が、私にはいなかったから。
「わたしも、そういう、友達とか、ふざけることができる人、ほしかったなぁ」
……作る機会はいくらでもあった。
慣れてくれば、この目の障害とも付き合っていけるし、多分きっと、私の障害を理解してくれる人だっている。
それでも、やっぱり過去は変えられなくて。
いつだって、本音を隠してニコニコ笑ってきた。
「……別に、これからいつでも作れるだろ」
「あはは、そうだといいんですが」
今の私、上手く笑えたかな。
声が少し上擦っていたかもしれない。
「すみません。少し酔ってるかもしれません」
面倒臭いなぁ私、と思って黙り込む。
こんなこと、キヨさんに言ったところでどうにかなるわけではない。
わかっているのだ。
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りんご(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。かっこいいと言っていただけて嬉しいです。ここ最近リアルなどが忙しいので、更新に波があると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです! (2019年11月21日 18時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 7話まで一気に読ませていただきました!キヨくんかっこいいです。続きが楽しみです。無理しない程度に頑張ってくださいね! (2019年11月21日 9時) (レス) id: bc58f84b7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作成日時:2019年11月10日 20時