35話 ページ35
『……あの、ですね』
『メッセージじゃ言いにくいので、』
『電話、とかダメですかね』
えい、と数分かけて送った。向こうの彼はずっとこのトークを見ていたのか、すぐに既読がつく。
すると、
『かける』
と3文字が届いた瞬間、こちらに電話がかかってきた。
ごくり、と唾を飲み込む。
くだらない、と少し言われるのが怖かったが。
｢………もしもし｣
彼なら、きっと大丈夫だろう、とタップして、スマホを耳に当てた。
『もしもし、なんかあったか？』
｢……喉、枯れてます？｣
電話越しの声は少し掠れていた。思わず聞いてしまうと、彼は咳払いをして、飲み物を飲む。
『実況撮り終わって声カスカスなんだよ。
つかお前、すげーことって何。早く教えろ』
単刀直入に聞いてくるキヨさん。
私は、スマホを握る手に力を入れる。
もう、目の前で叫んでいる動画の彼の声は全く聞こえていなかった。
｢………目が、ですね｣
｢赤系の色、だけ。見えるようになったみたいで｣
｢食べ物とかにも、少し色がついたっていう、お話です｣
『………まじ？』
数秒置いて帰ってきた声は低かった。
｢まじ、です｣
くだらないかな。
彼の帰ってくる言葉が怖くて、目をつぶった。
すると、
『それっていつの話？』
とキヨさんが食い気味に聞いてきた。
｢え、1週間……いえ、10日前くらいです｣
『……10日前……って、お前、それ俺とご飯行った次の日ってこと？』
｢は、はい。朝起きていきなり、見えるようになってて｣
暫くすると、電話越しから、はぁ〜〜〜〜っというため息が聞こえた。
『お前さぁ……ほんと…………』
｢な、何か悪いことしてしまったでしょうか｣
『うん』
｢エ！？｣
心当たりが無さすぎて、反射的に声を出した。
『凄いことでめちゃくちゃお前ためるから、めちゃくちゃ心配したじゃん』
｢は、はい｣
『そしたら見えるようになったって言うとんでもねえこと言うし、しかも俺とあった次の日って』
｢はい……？｣
『なんで言わねえの？？？？』
｢えっと……ごめんなさい｣
なんで私は怒られているの？とは、声が怖すぎるキヨさんには言えなかった。
『……コンサートのあとは空いてんの？』
｢え、あの、その日は7時解散で、空いてます｣
コンサートは大学生で色々な曲を3時間ほど演奏するのだが、体力が残っていないことが多く、その日は解散になる。
『じゃ、その後飯行くぞ。話はその時に詳しく聞かせろ』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 76人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「nmmn」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りんご(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。かっこいいと言っていただけて嬉しいです。ここ最近リアルなどが忙しいので、更新に波があると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです！ (2019年11月21日 18時) (
レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 7話まで一気に読ませていただきました！キヨくんかっこいいです。続きが楽しみです。無理しない程度に頑張ってくださいね！ (2019年11月21日 9時) (レス) id: bc58f84b7f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りんご | 作成日時：2019年11月10日 20時
