4話 ページ4
｢………、｣
彼は黙ってしまった。私は何か失礼なことを言ってしまったか、と思い、彼の顔を覗き込もうとした。
｢……や、あの、いえ、………大丈夫、すから｣
しかし、彼はそれを阻止する。
私はそれがなんだか悲しかったのだが。
彼の耳や、首の当たりが熱くなっているのが伝わってきて。
照れているのだと分かったら、なんだか少しおかしくなってしまって。
｢……ふふ、すみません。恥ずかしかったですね｣
｢………わかってるならいうなよ｣
ぼそりと、敬語の外れた彼の一面が見えて、私は嬉しかった。
✱
｢あ、ここです。ここ、私の家｣
住宅街の少し入り組んだ場所に入り、いよいよ私の視界が危なくなってきた、と思いきや、目が慣れてきたのかなんとなく場所を掴むことが出来ていた。
やっと見慣れた一軒家の前まで来て、心底ほっとする。
｢ドアとか開けられます？｣
｢だ、大丈夫です！｣
先程のからかいが効いてるのか、少し意地悪に聞いてくる彼。私も流石に家まで入れてもらうのは申し訳なく、彼から降りようとする。
しかし、両足が見事に力が入らない。
｢………………えっ、｣
｢あんた、さっき痛くて立てなかったの忘れたのかよ｣
笑いを含んだ声。呆れも混じってて、今度は私が穴があったら入りたいと思った。
｢家の者に連絡します………｣
｢おー、｣
おぶってもらったまま、携帯を出して電話をかける。コール2回、直ぐに優しい母親の声が聞こえた。
｢大丈夫？なんかあった？｣
｢………えっと、今家の前にいるので、外出てもらっていいですか｣
ガッシャン！！と家から色んな音が聞こえた。
✱
｢娘が迷惑をおかけしました！！ほんっとうにありがとうございます！｣
｢い、いえ、そんな。こんなお茶まで、頂いてしまって｣
そりゃ、家の前に知らない男におぶってもらったままの娘がいたら、どんな両親でも驚くだろう。
しかし、しかし。
｢………ごめんなさい。きよさん｣
母親は目の前の私を見てこの世の終わりのような顔をして泣き始め、父親は寡黙な態度から一変、わたわたとあちこち動いて何故かタオルケットを持ってきて私に被せてきた。
そのまま、きよさん諸共家に入れるんだから、行動力がありすぎる。
｢……ほらお母さん、私はこうやって大丈夫だから！｣
｢大丈夫でもぉ｣
｢こんな遅い時間まで引き止めるのも迷惑！｣
こうしてしばらく彼を帰らせずお礼と謝罪を繰り返す母親との攻防戦が続いた。
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りんご(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。かっこいいと言っていただけて嬉しいです。ここ最近リアルなどが忙しいので、更新に波があると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです！ (2019年11月21日 18時) (
レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 7話まで一気に読ませていただきました！キヨくんかっこいいです。続きが楽しみです。無理しない程度に頑張ってくださいね！ (2019年11月21日 9時) (レス) id: bc58f84b7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りんご | 作成日時：2019年11月10日 20時
