戦争屋、分裂中におき。 (ページ10)

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「……何があったのかは知らないっすけど、玄関じゃあれなんで…家ん中、どうぞ。」

背中を摩られながらそう言うものだから、尚更自分の情けない所が嗚咽と共に零れていくような気がしてならない。なのに、この後輩は。そんな事まるで気にしていない。寧ろ、全て受け止めてくれているような＿＿＿＿。

「ほら、立って下さい。……シャワー浴びますか？ココアでも淹れとくんで。ほら、立て…クソ先輩。」

悪意は、感じられない。軽く背中を押される。何時の間に彼は、ここまで成長したのだろう。いつまでも泣いている自分が情けない。ここはお言葉に甘えてシャワーを借りよう。そう思い、一度目元を拭き取り、一言だけ。

「有難うな、今日は甘えるわ。」

若干、声が震えてしまった。でも、彼は笑わないだろう。そう、自然と思い込めてしまった。一体、何時の間に彼はここまで成長したのだろう。だから、ここは彼の厚意に甘えてしまうのも仕方ないと思う。多分。

「分かりました。服は置いておきます。目元、腫れないようにして下さいよ？」

これだけでもう心は軽くなった。話、打ち明けてみようか…。そんな思いが脳裏を過る。

「話はいくらでも聞きます。今は、気持ちの整理をつけて下さい。」

彼は、人の心を読み取るのが上手くなったみたいだ。こんな他人思いの後輩を持てた。それが今は、何よりも嬉しかった。

一人の先輩として慕ってくれている、という理由もあるのだが、それより先に、一人の人間としてここまで手を焼いてくれる後輩が、凄く有難く、そして何よりも温かく感じた。

思わず有難う、と独り言ちたが、これは彼に届いているだろうか。届いていたら少し気恥ずかしい気もするが、届いていないのならそれはそれで少しむず痒い。そんな微妙な感情で足を進める。

「届いてますよ。」

…矢張り、テレパシーでも使っているのでは？と思う。勢いよく振り返ると、腰に片手を当て優しく微笑む後輩。

「…ほーか……有難な、本間に。」

いえ、とひらり、一度手を振る。ふふふ、と無意識に笑みが零れ、他人が自分の弱さを補い、支えてくれている事にもう一度有難う、と呟いた。