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「せやな…少なくともどこかのクソ先輩よりは心無いっすね。落としたんすか？ぶっ壊れたんすか？…ああ、元から無いのか。」
「そー。態々心配してくれて有難ぉな。」
「いーえ？如何致しましてぇ。」
だんだんキレ始めているロボロと、相手の神経を逆撫でするように煽り挑発するショッピ君。頼むからもうやめてくれ。この一触即発の空気、最早動くのさえ躊躇する。
視界の端にあたふたしているチーノとエミさんがいる。トントンは、我関せずとでも思っているのだろうか。此方を向かずに、ソファーに深く座っている。グルッペンは……
「＿＿え、グルッペンは？」
「「「えっ」」」
ショッピ、チーノ、エーミールの声が見事に重なる。いやだって、トントンの隣にいないし、部屋の戸を開けた音もしなかったし、なんならついさっきまで落ち込んでなかったか？
「グルさんならついさっき、この部屋出て行ったで」
俺等が論争に熱を入れている間に、あの自由気ままで真面目な総統はどこへ行ったのだろうか。
何故か、今直ぐに見つけなくてはいけないような気がして、急いで戸を開き廊下に出る。玄関に靴は…ある。二階に上がったのだろうか。そう思い、階段を目指して軽く走る。すると、もう既に二階に上がっていたらしいチーノが、上から見下ろして手招きする。
「おった？」
「こっちや！」
ドタドタと階段を上り、チーノは微かに開いていた空き部屋を指差す。ドアノブに手をかけようとした時、チーノに阻止される。何でだと思い、顔を見やると、何やら神妙な顔つきで口元に人差し指を当て、隙間から覗け、と目で訴えかけてくる。息を殺して足音も潜め、そっと隙間に近寄る。そこから見えたのは、窓辺に置いてある小さな椅子に腰掛け、淵に肘をつき外を眺めるグルッペンだった。昼間だからそこまで室内は暗くないが、反対側を向いているから表情は伺えない。
なのに、まるで彼の感情が手に取るように分かるような錯覚が自分を襲う。一体何故だろうか。ひしひしと、伝わってくる。得体のしれない何か、では無い。確かにはっきり感じ取れる、哀に当たる感情。
「＿＿グルッペン」
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作者名：ringo517 | 作成日時：2020年10月11日 20時
