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「要は、ひとらんらんが俺達の事を思い出せるかもしれない、という事だ。…ただまあ、もしかしたらという、可能性の話ではあるが…」
それは、初耳だった。皆がひとらんらんの所へ見舞いに行ったのは、なんとなく予想はしていた。だが、今の俺達に最も関係の深い名前、「○○の主役は我々だ！」に反応したという事は、今の俺にとって、唯一の救いであったと言っても過言では無い気さえしてくる。
「でも、俺達…ひとらんらんさんは、俺とショッピの事知ってるんですかね…」
と、恐る恐る手を上げたチーノが、目を伏せたまま呟く。
「確かに、俺達は…ひとらんらんさんも、それに…兄さんとしんぺいさんにも会ったことが無いですし…」
「いや、知ってはいるぞ」
即座に発したグルッペンの一言により、チーノとショッピ君は一斉にグルッペンの方を向く。
「本当に極偶にだが、会ってはいたんだ。で、聞くんだよ。最近の彼奴らは観てて如何だ、って。そしたら、ひとらんは、『ああ、新人の子達でしょ？面白い子達だね。いつか話して見たいなぁ…って思うんだよね。』だそうだ。」
「え、てことは…」
彼奴らは、自分が忙しいとしても、俺達の動画を観ていたのか…更に、グルッペンがあの三人と偶に会っていたということにも驚きなのだが。
「…ん？いや、でもちょっと待って…会っている、ではなく、過去形なんですか？」
「ああ…実は、数年前から、めっきり姿を見せなくなったんだ。神も、兄さんも…。」
その後は、誰一人として言葉を発せずに押し黙っていた。妙なもどかしさ、むず痒さを内心持て余し、もう一度深く座り直す。
そこでふと、視界の端で俯くグルッペンが意識に留まる。
「…俺が、我々だが、10周年の時。彼奴らは、」
「グルさん、待って」
途中で何かを察したトントンが、焦り気味に止めに入る。だが、グルッペンの口が閉じる気配は無い。切羽詰まって途切れ途切れになっているが、今にもグルッペンの気持ちが溢れ出て来そうな、何かの壁が決壊して、抱えてた辛さが一気にぶちまけられそうな、明らかに暗い雰囲気を感じる。
「彼奴らは、別々に会った筈なのに、口を揃えて言ったんだよ…『主役にさせてくれて有難う。』って。『俺はもう潮時なのかもね』……なんて、」
言うんだよ……と、微かに震えて掠れた声で、その後はもう押し黙る。ソファーに座って俯いているので、表情は読み取れない。だが、読み取ってはいけない、そんな気もした。
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作者名：ringo517 | 作成日時：2020年10月11日 20時
