はりつく

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Ki


「北山、おはよう。」

優しい声で毎日挨拶してくれる。
二人で一緒に電車で登下校するこの時間がすごく好きだ。

今は違うクラスだから、この時間と昼ご飯の時しかちゃんと話す時間がない。
時々廊下ですれ違うけど、そんなの一瞬だから挨拶くらいしかできない。



藤ヶ谷の話を俺だけが聞いて、
俺の話を藤ヶ谷だけが聞くこの時間がたまらなく好き。

癖なのか、電車ではいつも俺を守るように立ってくれて、電車がほんの少しでも揺れたら当たり前のように俺を支えながら「大丈夫？」と聞いてくれる。
多分彼女と出かける時に彼女にやってるからだろうけど、それでも嬉しい。






学校に着いたらそれぞれのクラスで授業を受けて、お昼の時間に藤ヶ谷が俺を迎えにきてくれる。
俺が藤ヶ谷を迎えに行く日もあるけど、大抵は藤ヶ谷が来てくれる。

お昼はいつも一緒に中庭で食べる。
横に座ってお弁当を食べていっぱい話をする。

優しい声で話して、俺のくだらない話を真剣に聞いてくれる。





どの瞬間もかっこよくて、ダメなところが見つからない。


俺が恋したのは、そんなかっこいい人。


ずっと隣にいる幼馴染だと思っていたら
俺と違って藤ヶ谷はぐんぐん背が伸びて、色気が出て女子にモテるようになっていた。
いつのまにか近くて遠い存在になっていたし、これからもっと遠くなるんだと思う。


こんなに近くにいるのに、手が届かない。






好きだと気づいた日から今日まで、
友達として藤ヶ谷の隣にいる。

好きだという気持ちは大きくなるばかりで、諦めるなんて想像できないけど、諦めるしかないのかなと思う時もある。

諦めるタイミングがなくて、諦める理由もないけど、早いうちに諦めた方がいいことはよくわかっているつもり。

一生、藤ヶ谷の隣にいたい。
友達として、隣にいたい。

藤ヶ谷に迷惑はかけられない。

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