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Ki
藤ヶ谷との時間がなくなり一週間が経った。
今までからは信じられないくらいに、藤ヶ谷と過ごす時間が減った。
玉森くんは極度の人見知りだったけど、一緒に過ごす時間が増えるにつれて、楽しい話もできるようになったし、今では玉ちゃんって呼んでる。
あれから考えた。
藤ヶ谷との時間が減ったのに、寂しさを感じなかった理由を。
もしかしたら俺は、藤ヶ谷のことを諦め始めたのかもしれない。
藤ヶ谷に酷いことを言って傷つけた俺と、優しくしてくれた藤ヶ谷は、どう考えても釣り合わない。
あのまま毎日一緒に登下校して、ご飯を食べるのは気まずい。
ラストチャンスだと思って見た目を変えたけど、もうどう足掻いたって上手くいく気がしない。
それなら諦めた方がきっといい。
今日も苦しい電車に乗って、学校に行く。
藤ヶ谷は、彼女を守りながら電車に乗ってるんだと思う。
駅に着くたびに乗り込んでくる人に押される。
苦しいけど、徐々に慣れてきてるから、そのうち大丈夫になるはず。
「いてっ、」
人に押されて、足を踏まれた。
何回目かなんて数えてないけど、何回目でも踏まれるのは嫌だ。
「いてっ」
今度は手を引っ張られた。
手を引っ張られて、そのままぎゅっと腕が背中にまわってくる。
どう考えてもおかしい状況なのに、なぜか安心してる自分がいる。
この香り、体の大きさ、俺を包む腕。
「北山、大丈夫?」
恐る恐る顔を上げると、そこにいたのは彼女と電車に乗ってるはずの藤ヶ谷。
「…へ?どうして?」
「ん?ああ、彼女、今日は体調不良で休むから俺一人。」
「あ、そうなんだ。彼女さん、大丈夫?」
「軽い風邪らしいから、大丈夫だと思う。…それより北山、大丈夫?」
「うん、大丈夫。」
「怪我してない?」
「してないよ、大丈夫。」
そのまま駅に着くまで、藤ヶ谷に抱きしめられながら、電車に乗った。
混雑具合は変わらないはずなのに、なぜか一人の時よりも辛くなかった。苦しくもなかった。
ぎゅうぎゅうの車内で、久しぶりに藤ヶ谷と一緒。
特に気まずくなることもなく、会話することができてほっとしたし、変わらない香りと優しさ、上から降ってくる声に、諦め始めたはずの心が揺れ動くのを感じた。
諦め始めたはずだった。
諦めることができると信じていた。
けど、そんなのただの思い込みだった。
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じゃがいも(プロフ) - なのはさん» なのはさんこんばんは、読んでいただきありがとうございます。もどかしい二人が書けるように意識していたので、お褒めの言葉とても嬉しいです!これからも頑張ります!! (2018年8月23日 0時) (レス) id: a8c069ecca (このIDを非表示/違反報告)
なのは(プロフ) - こんばんは、いつも楽しく読ませていただいてます^ ^このもどかしい甘酸っぱさが素敵ですこれからも更新を楽しみにしてます (2018年8月21日 23時) (レス) id: 952d1e1bb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:じゃがいも | 作成日時:2018年6月6日 22時