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Ki


藤ヶ谷の顔が、切れ長の涼しげな目が、揺れて揺れて力をなくしていく。

なんて酷いことを言っちゃったんだろ。
なんで酷いことが言えてしまったんだろ。

大切な幼馴染、初恋の人、大好きな人に。





「…ごめん、」

謝らなきゃいけないのは俺なのに、謝ったのは俺じゃない。

謝らせてしまった。

そんな自分が嫌で、醜くて、惨めで耐えられない。そしてそんな自分が藤ヶ谷の前にいることが許せなくて、感情のまま走り出した。

藤ヶ谷が俺を呼ぶ声がしたけど、止まれなかった。
止まれるわけがなかった。

止まってはいけない気がした。









ホームを走って走って階段を駆け上がる。
ろくに前を見てない俺は、階段を下る人と何度もぶつかった。
ぶつかってぶつかって、迷惑がられて、でもそのまま走った。


階段を上りながら、さっきの藤ヶ谷の言葉を思い出した。


藤ヶ谷は何が知りたかったんだろう。
俺の見た目が変わっていくことに不信感を覚えた?
俺の好きな人が誰か教えなかったから、聞き出そうとしてた?
俺が好きな人の好みに寄せて見た目を変えたことに気づいた?そしてそれをやめさせようとした?


見た目を変えても無意味だって、そう言いたかった?


だって、見た目をガラッと変えなきゃ、見てくれないでしょ。
何年も一緒にいて、俺の顔なんて見飽きてるでしょ。
こうでもしないと、何も前に進まない。




俺は、藤ヶ谷とは違うんだよ。
かっこよくて、モテて、言い寄られて、誰でも落とせる藤ヶ谷とは違う。

そんな藤ヶ谷からすると、俺のやってることは馬鹿っぽくて、なんの効果もないのかな。





もうどうすればいいんだよ。

大好きな人にあんな酷い言葉を吐いた。
きっと嫌われた。たとえ恋人になるのは無理でも、友達でいたかった。

こんなことになるなら、最後のチャンスとか言ってあれこれ見た目を変えなきゃよかった。









階段を駆け上がって、改札を抜けて、家までの道を一人で歩く。

藤ヶ谷のいない帰り道は久しぶり。

これからは、もうずっと一人かもしれない。

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じゃがいも(プロフ) - なのはさん» なのはさんこんばんは、読んでいただきありがとうございます。もどかしい二人が書けるように意識していたので、お褒めの言葉とても嬉しいです!これからも頑張ります!! (2018年8月23日 0時) (レス) id: a8c069ecca (このIDを非表示/違反報告)
なのは(プロフ) - こんばんは、いつも楽しく読ませていただいてます^ ^このもどかしい甘酸っぱさが素敵ですこれからも更新を楽しみにしてます (2018年8月21日 23時) (レス) id: 952d1e1bb0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:じゃがいも | 作成日時:2018年6月6日 22時

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