【黒執事】女王陛下の意のままに (ページ2)

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1.グレイとフィップスページ2

----グサッ

“それ”を刺すと、赤い液体が飛び散った。

「…はぁ、だから言ったのに」

女王の執事の一人、チャールズ・グレイはため息とともに小さく呟く。

そして、“それ”の頭を足で踏みつけた。

「フランスごときがイギリスにスパイなんて送り込むから…まったく…仕事、増やさないでもらいたいよ」

彼は足を下ろし、“それ”の服の胸ポケットを慣れた手つきであさり、一枚の紙切れを取り出す。

一通り紙に書いてあったメモに目を通して、クシャ、と紙を握り潰した。

「終わったか？」

そこに女王のもう一人の執事、チャールズ・フィップスが現れた。

「ん、あとは始末だけ。コイツ、やっぱフランスのスパイだった。イギリスの状況とか、この紙にメモしてあったし」

グレイは、ビッ、と赤が付いた剣を振り払い、“汚れ”を落とす。

それから剣を収めた。

「やはりそうか…」

フィップスは頷いて、グレイの手元の握り潰された紙に目をやった。

「ちなみに、どんな事が書いてあったんだ？」

興味本位にフィップスが尋ねてみると、グレイはくしゃくしゃになった紙を開き、もう一度目を通し始める。

「んー…イギリスの軍の種類、軍の人数、政治のやり方、使用人のデータ…そんなカンジ？」

殴り書きのフランス語をグレイはサラッとまとめ、的確に、かつ簡潔にフィップスに伝えるあたり、態度に合わない教養の深さが感じられる。

「使用人のデータ？俺達のか？」

それを聞いたフィップスは、眉をピクリと動かし、険しい表情になる。

グレイは、再び紙を握り潰してズボンのポケットに入れた。

「そ。ボクとフィップス、ジョン……それにAのもね」

薄く笑みを浮かべたグレイは、ギュッと剣の持ち手を握り締めた。