われもこうの花【五条悟:高専】 ページ15
わからないよ。
「悟には分からないよ!」
ドンッと鈍い音がして机が倒れる。
鉄パイプの甲高い音が木製の声を掻き消した。
最後の響きが消えるまで押し黙って、聞こえるか聞こえないかの声で呟く。
「悟は分からないよ…悟は恋したこと、ないから」
これが偏見だとか、結末の仮だということは知っている。
だけど耐えられなかった。
言うしかなかった、こんな気持ちを持ってること、悟に言わなきゃ意味なんてなかった。
息が震えて、目頭が熱くなった。
うまく喋れないから、もうこの先は言いたくなんてない。
だけど、言わなきゃけないと思った。
「悟は、さとるはわたしにとっての、とく、べつだから」
公園で寂しかったとき、話しかけてくれた。
私が悟にとっての特別じゃなくてもよかった。
わたしの一番の特別は悟だから。
だから消えていくのが怖くて、悟に遊ばれてる女の人が羨ましくて。
悟に少しでも興味を持ってもらえる人が羨ましくて。
私が好きなのは顔だけじゃないって、だから。
「悟には分からないよ、私の気持ちなんて」
知られたくない、でも解ってほしい。
そのまま、悟を見ずに走った。
悟の声が聞こえたのはその、数秒後。
廊下で、術式を使っていない悟の駆け足の音が聞こえる。
55人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱりす(プロフ) - 匿名希望さん» コメントありがとうございます、身に余る言葉です! (2021年1月16日 21時) (レス) id: be542bd55e (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望 - 文才が溢れ出ていて読みやすい。好きです (2021年1月16日 20時) (レス) id: 56187da194 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ