こわかった【虎杖悠仁】 ページ14
神さまは私に踏み出しかたと、息の仕方と、指を動かす力をくれた。
考える脳も、愛を感じる心もぜんぶくれた。
人間ができることを貰えて、幸福と知った。
男の子を好きになって、声がうまく出なくて、臆病で、でも強がりたくて。
私の恋はそんなものだった。
世間一般から好かれるような男の子を好きになった。
生まれは特別でも、好きになる対象は変わらないのだ。
優しくて温かい。
私の知らないところ、好きになってくれて。
私が本当に欲しかった言葉をくれた。
呪具を運んでいたら手伝ってくれて、私の字を褒めてくれて、それで
それで
「なあ、Aは好きな人とかいる?」
私は何をあげたのだろう。
笑顔は、うまく笑えなくて。
褒めるのも、恥ずかしくてできなくて。
私はなにひとつ出来ていないのだと知る。
「な、教えて」
私の好きな人は悠仁だよ。
そう言えたらいいのに。
それが悠仁にとって足りるものであれば、なおさら。
私は悠仁とあって色んなことを知った。
笑うと楽しくて疲れが吹き飛んじゃうこと、怒りでどうにかなっちゃいそうなこと。
面白いテレビも、美味しいご飯も、泣いたら句点とか読点じゃ表せないほど息苦しくなってうまくしゃべれないこと。
悠仁が好きって言いたい。
言ってみたい、言えたらいい。
「わたし、」
「ん、教えて?」
私は悠仁が好き。
言い終わる前に、私の体は悠仁によって抱きかかえられていた。
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ぱりす(プロフ) - 匿名希望さん» コメントありがとうございます、身に余る言葉です! (2021年1月16日 21時) (レス) id: be542bd55e (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望 - 文才が溢れ出ていて読みやすい。好きです (2021年1月16日 20時) (レス) id: 56187da194 (このIDを非表示/違反報告)
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