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シーツは幸福に濡れる【五条悟】 ページ1

冷たい夜は愛を攫ってやってくる。


明るくて甘い幸福を背負って、私の耳元に今夜も。



「僕と結婚したい?」



「どっちでもいい」



私の髪を撫でながら、掬って感触を味わうように、愛おしそうに話しかける。


私だってこの行動や目線が愛おしくて溺れそうだけれど、結婚したいかと聞かれればそうでもなかった。


返答に困るような事を言えば、目を丸くした悟が耳に触れた。


指は冷たいけれど、触ってほしくない訳じゃない。


肩をすくめて見上げると、もとからの余裕を取り戻したようで私に軽くキスをした。




「何だ、愛に飢えてるAの事だからてっきりこれが欲しいかと」



そう言って給料三ヶ月分の小さな箱を枕の上に置く。

寝室の惣闇にも似た色が白いカバーの上で闇の中でも見えるほど映える。



これを拒否すれば怒られるのだろうか。


彼の青い眼は断らせまいと私を見つめている。




私は悟が居たらいい。


悟さえ私が分かるところに居れば何でもいい。


何を与えられても、奪われようとも構わない。


歌姫や硝子に言われた、どこがいいの、なんて言葉。



他人から見たらどんなにくだらなくたって、みっともなくたって構わない。


私は悟が居たらいい。


人として最低限のことはしなくちゃいけないけれど、悟はその中に入るほど愛おしくなってしまったのだ。



もしもふたりで地獄に落ちるのだとしたら、私は彼から離れない。


ふたりで地獄を歩いてゆく。



もう落ちているかな。



「ねえ、起きてる?A」




今は彼の呼吸の音と声しか聞こえない。


それだけでいい。




私を抱きしめる手。



虚空と孤独に愛された男。

誰よりも強くて愛おしい。



私は悟を呪えないけれど、悟は私を呪ってくれる。


きっと朝になればこんな冷静な私は死んでいて、飛び上がるほど喜ぶ私がいる。


昼はどうしたって寂しいけれど、夜は悟の愛を痛いほど感じるから良い。



愛=呪い


なんてロマンのひとつだってないけれど。


貴方がいない世界なんて、どんな地獄よりも地獄的だわ。

忘れてゆくから【夏油傑】→



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ぱりす(プロフ) - 匿名希望さん» コメントありがとうございます、身に余る言葉です! (2021年1月16日 21時) (レス) id: be542bd55e (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望 - 文才が溢れ出ていて読みやすい。好きです (2021年1月16日 20時) (レス) id: 56187da194 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽりすめん x他1人 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2020年5月21日 19時

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