love ページ1
ふる、ふる。
大きな、真っ白の薔薇みたいにふわふわとした雪が降ってくる。
私は動いていないはずなのに、雪が弧を描いて落ちてくるのを、自分がまわっているみたいに錯覚してしまう。
今宵は大雪、北の国から。
かわいがっていた白銀の狼を追いかけて、足元に散らばる鮮血をたどって。
はっと息を飲んだ。
あまりにも勢いよく吸い込んだので、肺が凍てつきかけて、それで慌てて口を閉じた。
狼はいつのまにか、興味をなくしてか消えているし、私は目の前の人とたったふたりきりになった。
近付いて触れてみると酷く冷たく、生ぬるい血のにおいがする。
雪のように白くて冷たくて、きめの細かい肌。
グレーの曇天のような、けれど輝くクオーツとも見て取れる柔らかな髪。
どれもが人間らしくなくて、それでしまった、いけない、と胸元に耳を当てる。
呼吸はしていない、心臓も動いていない、死んでいる。
けれど本当にまだ生きているみたいで私はこの場から動けずにいた。
放っておけなかったのだ。
いつだったか読み聞かされたスノウホワイト、白雪姫の美しい死体にまるでそっくり。
喉にりんごが詰まっていれば、とぐいっと顔を近づける。
どうか考えても死因はそれじゃないだろうに、それでもと膝をゆっくり目の前におろした。
項垂れて、首がかっくり曲がった彼を、私のストールの上に横たわらせて、本当にそっと、柔らかな眠っている赤ん坊にキスしているみたいにその唇に近づけた。
あれ、なんだかふわふわ、もこもこ。
「…何してるの」
え、生きてる。
ありえない、だって彼死んでいなかった?
私がキスしようとしていたら避けられて私はストールとキスしたっていうこと?
いや、いいえ、初対面の人間にキスされるのは嫌だよね、うん。
「死体をいじくりまわして、楽しかった?死体なら何してもいいと思った?人間ってほんとうに馬鹿だね」
「…ご、ごめんなさい」
「謝るだけなんだ、それで?」
「もうしません」
さっきまで死体だった彼は饒舌にべらべらと話はじめた。
そうして興味を失ったのか、よく分からない言葉を吐いて消える。
それだけだった。
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猿モンキー(プロフ) - 有毒さん» ありがとうございます、身に余るお言葉です…not賢者書くのが大好きなのでそう言って貰えると嬉しいです、コメント、愛読ありがとうございました。 (2021年2月8日 0時) (レス) id: be542bd55e (このIDを非表示/違反報告)
有毒(プロフ) - コメント失礼します。文章がすごく綺麗で言動が本当にオーエンらしくてとても素敵でした(*´˘`*)今まで賢者=夢主のお話ばかりみていたのですが、賢者≠夢主の魅力に気づけました、、!これからも頑張ってください(*´ ˘ `) (2021年2月7日 23時) (レス) id: be10f7a4f1 (このIDを非表示/違反報告)
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