わがままは前傾姿勢 ページ7
あれから夏が来て秋が来た。
11月は肌寒い。
私達は喋った日もあるし、一度も喋らなかった日もある。
余りにも退屈で、恋とも愛とも呼べない時間が流れる。
スケッチをしたら下手くそ、と言われてしまって、私はずっと彼を描いていたけど下手くそは変わらなかった。
「今日僕の誕生日なんですよ」
「あ、そう」
「お願いがあるんです」
「死んでほしいの？」
「もう、人魚を人間に食べて欲しくないんです」
あれは馬鹿な人魚が悪いのに、なんて。
食べる人がいなかったら海は溢れるんじゃないのなんてことも考えた。
考えておく、とだけ呟いた。
彼はこの閉鎖的な空間で変わる季節を楽しんでいる。
秋はキノコがよくなるの、と言ったら嬉しそうに山に連れていって欲しいと彼は頼んだ。
私は自分で行けと答えたけど。
それから数日。
ニュースでは私が人魚を育てて食べるのか、なんてニュースが流れている。
レポーターと専門家が私に何か言っているのは分かった。
専門家は食べたことも試したこともないだろう。
人魚の味や効能なんて、金が無いから知らないくせに。
「A、人魚見せてよ、マーマン綺麗なんでしょ？」
専門家の友人は目を輝かせて私に聞いた。
見世物じゃないけど、私はうるさいのは嫌なので彼女を連れて行くことにした。
「超綺麗じゃん、ねえ、食べるの？勿体なくない？よかったら私に」
「今日び、呪いの病に効くのは人魚ではなく科学ですよ、ねぇあんたの政治家のパパに言っておいて、人魚は病に効かないし不老不死にもならないって」
「えっ、それって人魚の漁やめろってこと？」
当然だ。
私は黙って彼女に人魚料理を食べる私のビデオを持たせた。
彼女は固まっていたけど、ジェイドが私に飛びついたとき黄色い声をあげた。
愛があるのね！じゃあ帰してあげるべきよ！と。
私はけほり、と羽を吐いた。
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ぱりす(プロフ) - 妖々梅雨里さん» コメントありがとうございます、諸事情によりこちらの垢で返信させていただきます、尊敬していただき、恐縮です…！ (2020年10月11日 19時) (
レス) id: be542bd55e (このIDを非表示/違反報告)
妖々梅雨里(プロフ) - 悲哀物語……なのでしょうか。 最後の羽の表現に心引かれました。私、そういう類いの表現が死ぬほど出来なくて…尊敬します。 (2020年10月11日 18時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱりすめん(プロフ) - せら。さん» コメントありがとうございます、私あの作品が好きで好きで…嬉しいお言葉、ご愛読ありがとうございました！ (2020年8月17日 23時) (レス) id: be542bd55e (このIDを非表示/違反報告)
せら。(プロフ) - 元となる作品を読んだことがあったので、とても楽しく読むことができ、それと同時にとても切ない気持ちになりました…とても良い作品でした…！！！ (2020年8月17日 23時) (レス) id: 1c6535be80 (このIDを非表示/違反報告)
ぱりすめん(プロフ) - やきそばさん» えっ、ご存知で！？そのとおりです！私あの作品が本当に大好きなんですよ！気づいてくださりありがとうございますうわあああああ（超うるさい） (2020年8月14日 19時) (レス) id: be542bd55e (このIDを非表示/違反報告)
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