朝朗の夢見草【ブラッククローバー】 (ページ3)

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『ふわぁ .. 。アスタ，またやってるね .. 。』

時期はもうすぐ３月に差し掛かる頃。春の訪れは，彼女にとっては，春眠，暁を覚えず，とでも言ったところか。眠たそうに，木の枝に乗り欠伸をする，白い髪を靡かせる姿は，側からみたら森に住む妖精のようだ。

「やぁ」

『！』

声がした方を，少女は振り向く。其処には，

『ヴァンジャスさん！』

金色の夜明け団が団長である，ウィリアム，ヴァンジャスの姿があった。
少女は，嬉しそうに，顔を喜色に染め，トン，と軽い音を立てて地面に着地をして近づいていく。

『今日は魔法帝が凱旋しているんですよね，ヴァンジャスさんは行かないんですか？』

不思議そうに，少女は首を傾げて問う。

「時間が空いたからね，Aに，久しぶりに会いたいな，と思って。」

仮面の中に表情は隠されてはいるが，彼も嬉しそうに微笑む。
そして，言葉を続けた。

「それに，もう直ぐ魔導書授与式だろう？」

あっ，と思い出したように，少女は目を見開く。コロコロと表情が変わる姿も，また妖精のように愛らしくみえる。

『そ，そうでしたね .. 。』

少々ぎこちなく答える少女に対し，彼は余裕そうだ。
少女は，誰にも言ってはいないものの，魔導書授与後に金色の夜明け団への入団が決定している。少女自体，それに対して別に異論はないものの，その内定は各団の団長の争いにより決定しているので少しぎこちなさもあるのだろう。まだ，魔法が完全に開花していないのにも関わらず全団の団長が争ったという事実には，少女が只者ではない事が感じられる。

「おや，誰か来たね。」

まだ話していたかったのにな，と少々残念そうに彼は去っていく。
少女は，ヒラヒラ，と手を振って見送ると，来た人物の方に振り向いた。

「ん？A，誰かいるのか？」

『んーん，アスタ。また振られたんでしょ？』

ふるふる，首を振って，少女は話題をさりげなく変える。

「オレは諦めん！！」

むん，と手を組んでアスタは宣言すると，彼は筋トレの準備をし始める。

その様子にふんわり微笑んだAは，私がいては集中できないだろう，とその場から立ち去った。