産まれて、笑って ページ10
だいぶ遅刻ですｽﾏｿ。
「さて＿＿今日も掃除か」
朝六時。兵士長の一日は、自室の掃除から始まる。
棚の上の埃をはたきで落とし、順番に窓、壁、家具を雑巾で磨く。最後に床を掃いて、掃除は終わり。
毎朝、単純な作業の繰り返し。今日は珍しく仕事が休みであるが、これをしなければ気分が落ち着かない。
「ふ…そういや今日は＿＿」
そうだ、この非番は年中行事によるものだ。
十二月二十五日。
聖夜と呼ばれる一日。
アイツは、今家族と居るのだろう。プレゼントを貰い、滅多にないご馳走に舌鼓を打ち、幸せな時を過ごしているのだろう。
俺はどうか。物心ついた時から地下街暮らしで、祝い事というものを知らなかった。
その日が、自身の誕生日である事も。
「＿＿A」
名前を呼んでみたが、そこにそいつは居ない。居る訳もなかった。
枯れ葉が一枚、木枯らしに吹かれて木から飛んで行く。
…と。コンコンという軽快な音が、扉を伝って響いた。
「＿＿さん」
「へいちょうさん」
「へーいちょーうさんっ！！」
ここで漸く声の主に気付いた。一体何の要件で。
「リヴァイ、居るかーい？Aがどうしても君に会いたいって聞かなくて」
例のクソメガネもセットときた。
「＿＿入れ」
非番の日には絶対に会う筈のない二人に複雑な感情を抑えきれぬまま、俺は応えた。
「へいちょうさんっ！メリークリスマス！」
「…それで来たのか」
拍子抜けする程の要件に目が点になった。
「幼女に向かって『それで』は酷じゃないか。ちゃんとプレゼントだって用意してきたみたいだしさ、受け取ってあげてよ」
「…テメェは一旦下がれ、ハンジ」
「はいはい、分かったよー。夫婦の時間を楽しんで」
そう残して奴はニヤけながら部屋の外へ消えた。相変わらず面倒くさい。が、アイツは今プレゼントとか言ったか。
俺は目の前の子供に視線を移した。
二人きりになり、一気に口数が減り赤面する彼女。両手に収まる程の大きさの、小綺麗に装飾が施された箱を大事そうに握りしめていた。
愛らしいそいつの目の前にしゃがみ、目を見て語りかけた。
「プレゼントか」
「うん…クリスマスプレゼントでもあるけど、今日がへいちょうさんの誕生日だって、はんじさんに聞いてさ」
「！」
真逆こいつは、その為にハンジを…
「だから＿＿ハッピーバースデー。わたしの大事な、あなたに」
こんな誕生日は初めてだった。
どんな顔をすれば良いのか、分からなかった。
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あーる(プロフ) - 琴さん» ありがとうございます！！！！！まだまだ序盤ですが更新コツコツ頑張ります🥹 (12月16日 21時) (
レス) id: 4a598cc49e (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - やっぱりあーる様の作品はめっちゃ面白いです！ (12月16日 21時) (レス) @page4 id: e939615bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あーる | 作成日時：2023年12月15日 15時
