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「やはり…あいつの女房にそっくりだ」
貴方「あいつって、ドジ…東の?」
「ああ。顔付きは違うが、どこか似ている。雰囲気と言うべきか…よく分からん」
Aはきょとんとして首を傾げる。
遺影らしきものは審神者の部屋で見たが、自分とあの写真の顔が似ているとは到底思えない。
貴方「そう、ですか」
正直この空気、かなり気まずい。
しかし老人は構わずに続けて口を開く。
「あいつは…女房が死んでから、取り繕った笑顔を見せるようになった。多分、あの小僧も同じだろう」
貴方「?」
「自分は大丈夫だ、だとか一人でなんとかなる、などと信じ込むのは身体にも精神にも毒だ。だから…」
老人は、一瞬言葉を詰まらせて言った。
「せめて二人に、話だけでも聞いてやれ。心の支えになれとは言わん、口に出させるだけで良い。それくらいが一番丁度良いんだ」
その言葉の意味は、その時のAには分からなかった。
Aは何か言おうとしたが、寿を背負った審神者の「お待たせ!」という声に遮られた。
審神者「ごめん、待たせちゃって。先生、本当にありがとうございました。治療費はお幾らで…」
「いらん」
審神者「え?でも…」
「女房の時の詫びだ」
審神者「…分かりました。すみません」
帰り際にもう一度審神者は老人に深くお辞儀をして、老人の家を後にした。
夜道を歩きながら、Aは審神者に話し掛ける。
貴方「ねぇ…さっき言ってた、詫びって何のこと?」
審神者「ああ。先生は、結さんを最期まで診続けてくれてさ。あの人は悪くないんだけど…結さん助けれなかったこと、まだ後悔してるみたいで」
貴方「あー。なんか気難しそうな人だったしね」
審神者「でも、ああ見えてすごい優しい人だからさ。他の医者にはサジ投げられ続けたのに、あの人だけはずっーと面倒見てくれてたんだよね。感謝しかないよ、今となっては」
貴方「ふうん」
審神者は寿を背負い直して言った。
審神者「話変わるけどさ。寿に話だけでも聞きたいんだけど…正直に本心言ってもらえるかなぁ?」
貴方「さあね」
審神者「一人で悩み倒すくらいだから、ほいほい言えるものじゃないってことくらいは分かるけどさ…」
貴方「いやでも、ほら。原因はストレスじゃないかもしれないじゃん?決め付けは良くないって」
そういうもんなのかなぁ、と言って、審神者は前を向き、俯き加減で歩いた。
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そると@受験生(プロフ) - いつの間に沢山のコメントありがとうございます!これからも頑張りますぞ〜(*`・ω・) (2017年3月31日 18時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
あやとり猫(プロフ) - 初コメ失礼します!! シリーズを見つけて1章から飛んできました!!面白すぎて涙が出ました(勿論感動でも出ましたよ!!) 鶴さん…みかち…ジジィが尊いことはわかりました(( そして遅くなりましたが続編おめでとうございます!!更新ゆるりと楽しみにしております!!(*^▽^*) (2017年3月20日 1時) (レス) id: ace5edcb89 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - 続編おめでとうございます!!鶴丸さぁあん!!!ついに....!ついに....!恋をした!!!!短編も楽しみにしとりますぞ!!! (2017年3月19日 20時) (レス) id: d9abe7bbeb (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - やったいちこめだやっふぃ!!!!続編おめでとうございますありがとうございます、いつも楽しみにしてます! (2017年3月19日 20時) (レス) id: 2ca1777b5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そると | 作者ホームページ:
作成日時:2017年3月18日 11時