ラウンド12☆一期視点☆ ページ13
「か…加州殿っ」
「なーに?なんでさっきからついてくるの」
大広間に戻る途中で、一期に名前を呼ばれた加州は立ち止まって振り向いた。
「その…先程の、主に対する態度は」
「ああ、今の?愛想は良くしといた方が良いでしょ。なんてったって主なんだから」
当然の事の様に言ってのける加州に一瞬だけ戸惑ったが、一期は続けて言った。
「…あの人のことは、私も可哀想だと思います」
「へぇ。で?」
「で、とは…?あの年頃の少女を未来を奪うのは可哀想だ、ということなのでは?」
加州の顔から、表情が消えた。
「あ…」
「一期さ、何か勘違いしてない?」
狼狽える一期に、加州は淡々と言った。
「俺、別に主に同情してる訳でもないし、可哀想だとも思ってないよ」
「え?」
「信じてた人に裏切られる時の気持ちってさ。結構心に堪えるよね」
加州は口角をにやりと上げた。
「まさか…加州殿」
「どうせ主を殺せるなら、うーんと絶望させてから殺したいんだよね、俺」
加州の目には、光が宿っていない。
一期はやっと思い出した。
前の主に酷い仕打ちを受けていたのは、加州だったということに。
初期刀として前の主に一番長く使え、懐いていた加州。
一番身近に居たからこそ、一番良いように使われていた。
始めは主の為ならと思って我慢していたが、徐々に『苛々するから殴らせろ』などとエスカレートしていく命令。
それに我慢が効かなくなり、加州はとうとうそれに歯向かってしまった。
それからであろう。前の主に、加州が人としての扱いを受けなくなったのは。
ろくに食事も与えようとしなくなった。
好き放題暴行し、手入れもせず放置するようになった。
加州を庇えば自分だって同じ目に遭う。
それに怯えた他の刀剣男士達は、あんな風にはなりたくないという思いを胸に秘め、見て見ぬ振りをしながら生活していたのである。
「正直、あの時は主を消したかった。だから自刃せずに、主を殺す隙を伺いながら生きてた。けど今どう?政府から主を殺せって。笑っちゃうよね」
「…」
「俺は、主を恨んでるよ。殺せるなら違う人間でも良い。とにかく自分の審神者っていうものさえ斬れれば、俺はそれで満足だから」
「…加州殿、」
「何?何か文句あるの?それでもあの人を可哀想だなんて言うの?よく言えるよね、俺のことは見捨てたくせに」
言葉を失ってその場に立ち尽くした一期は、遠ざかる加州の背中をじっと見つめていた。
194人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
そると(プロフ) - ナツカさん» 一応この物語は完結したら少しいじってpixivの方にも載せたいと思っております!最後になってしまいましたが、これからも楽しく、張り切って書かせて頂きますのでよろしくお願いします♪ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - ナツカさん» うわああああこんなに褒めて頂けるとは…(´ノω;`)ウレシイ…!!!大体の結末は考えていますが、自分は気分屋なので今とはガラッと変わるかもしれませんね( ˇωˇ )あと現在はもう受験を終えて高校一年生やってます…紛らわしくて申し訳ありません(汗)→ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 長文、大変上からの無礼な感想誠に失礼いたしました。ただ、是非完結まで追いたいです。占ツクをやって3年近くたちますが、1番と言っていい程楽しめる作品です。勉強との両立、大変だと思われますが、ご自愛のもと、どうかこの素晴らしい作品を書き上げてください!!! (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 先が読めなくて、主人公と刀剣がどう和解するのか、はたまたバッドエンドなのか、予想がつかず妄想が膨らみ大変ワクワクします。本当に、もっと評価されるべきです、何故HIT数がこんなに少ない……! 正直占ツクよりも、pixivなど年齢層の高い場所で受ける作品かもです (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - ギャグも、キャラをよく理解しかつ自分の中でキャラを動かせてるのだと思います。違和感なく楽しめます。受験生ということでしたが、高校3年生ですか? その年でここまで書けるのは、脱帽、尊敬に尽きます。結末までの構想は練ってあるのですか? 続きが気になります (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そると | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月6日 18時