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第三十一話 言明 ページ34

「愛が早急に死ななければ、さらに死人が増える。そういう風に出来ている(、、、、、)

『だから、言ってんだろ……、お前ら全員死ねばいいっ、て……』

「利害だよ。考えれば分かるだろ」


睨み合いの時間が続く。
良の言うことは全て正論で、だけど、正しいとはどうしても思えない。

そんな沈黙を破るように、パンと手を叩く音。


「本番は交流会だ。今いがみ合っても仕方ないだろ」

「……」

『……』

「不服そうな顔はすっげぇ似てんのな……」


パンダくんの切り替えのおかげで、これ以上の戦闘は回避出来た。
どうせ痺れ効果の毒を入れられたままじゃ、少しずつ動けなくなっていくだけだっただろう。


「交流会でお前を殺す。覚悟してろよ」


そう捨て台詞を残して去っていった。



僕はその背中が見えなくなるまで、睨みつけていた。



「まぁ、花厳の本家にずっと居座ってちゃ、あんな考え方になっても納得だけどな」

「それにしても愛、お前必要以上に煽っただろ」

『言わなきゃ、気が済まないんだもん……』

「おかか」

恵くんだけでなく、肩を貸してくれている棘くんからもお叱りの言葉。
本当に、一足遅ければ僕はここで死んでいたんだろうなと思う。
それでも、自分の意思を曲げることだけはしたくなかった。



『(したく__ない、……けど)』



良を前にして、その自分の意思が、少し不明瞭になった。
死にたくないし、花厳家のために死んでやる気は毛頭ない、けれど。



『(良を、殺す気になれなかったのは……)』





僕のあの日の覚悟に反するような、矛盾した思考だった。









_数週間後
_交流会前日



「あーっ、疲れた!全く手加減ないわよね、パンダ先輩って!」

『お疲れー。水と麦茶とー、カルピスあるよ』

「スポドリ!ポカリよこせ!」

『ねぇよ』


特に希望がないらしかったので勝手にカルピスを選んで渡す。
今は休憩中で、野薔薇は受け取ったカルピスを飲みながら僕の隣に座った。


「連日筋肉痛よ、もう……はー、暑っつい」

『交流会、もう明日だね』

「……そーね」


頬杖をついたまま、こちらは見ずに答える野薔薇。
ペットボトルのキャップを弛めて、飲み物を喉に通す。

別に気まずいわけではないのだが、特に思い浮かぶ話題はなかった。
休憩、あと何分だったかな。


「ねぇ、愛」

『ん、なに?』

「……ずっと気になってたことなんだけど」


例のごとく目は合わない。
あくまでも世間話の体で進めたいようだ。

第三十二話 閑話→←第三十話 齟齬



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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2021年2月20日 21時

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